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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は北部農業技術センター 農業・加工流通部 永井 耕介が担当します。

雑草の不思議

「雑草(ざっそう)」から何を連想されますか。「たくましい存在」悪く言えば「しぶとい存在」でしょうか。確かに、踏まれても、抜かれても無くならない草というイメージが強いのではないでしょうか。

しかしながら、すべての雑草が強くてたくましいわけではありません。水田雑草は水田にしか生えませんし、畑地雑草は水田には生えないのです。作物にそっくりな雑草をよく見かけますが、その作物の栽培環境が生えてくる雑草に適しているからです。雑草が沢山生えている「ほ場」、それはその雑草がはびこる環境条件が揃っている「ほ場」だと言えます。とはいえ、雑草の種子が無ければ、雑草は生えません。

稲や小麦などの作物とそっくりな雑草をよく見かけます。ではどうすれば、間違いなく雑草を見分けることができるのでしょうか。それは穂が出る時を待てば、明らかに違いを見分けることができます。この方法は、今から約2千年前に書かれた「聖書」のなかに明確に記載されています。

昔から、農業は「雑草との戦い」と言われて来ました。また、「上農は草を見ずして、草を取る」と称されてもいるのです。この言葉は、最も優れた農家は頻繁にほ場を見て回り、雑草を取り除いて、決して、雑草の種子を落とさないことを言い表しているのです。今日では、除草剤が開発され、頻繁にほ場を巡回しなくても雑草の管理はできるようになりました。とはいえ、最近では外来種の雑草などこれまでの除草剤では効果のない雑草も増えてきています。

ところで、「雑草」は本来どのようなものなのでしょうか。「雑草の定義」があるのでしょうか。ある「雑草学」の本には「雑草とは許可無く生えてくる植物」と書かれています。この定義によると、例え「作物」であっても、雑草になりえます。「トマト」を栽培しているところに「ホウレンソウ」が生えてくれば、「ホウレンソウ」は雑草になります。それだけではありません。同じ品目の作物でも「品種」が異なれば、雑草になりえるのです。例えば、「普通の稲」の水田に、「紫黒米の稲」が混ざっていれば、この場合は紫黒米の稲が雑草になるのです。栽培者の立場で、「目的としない作物」はすべて「雑草」と言うことになります。

「人の都合」で「雑草呼ばわり」していることが解りますが、雑草が全く人の役に立たないわけではありません。例え「食べることができない雑草」でも、耐病性などの優れたDNA(遺伝子)を持っている場合が少なくないのです。しかも、人類がDNAを作ることができない現在では、雑草も「貴重な遺伝子源」と思われます。いつか、「人類の食料危機」を救ってくれる「雑草」が誕生するかもしれません。