「田んぼのイトミミズ」
但馬地方では、「コウノトリ育む農法」に取り組む農家が増え、コウノトリの餌となる生き物を増やす冬水田んぼが多く見られるようになってきました。
冬水田んぼには大量のイトミミズが発生します。「金魚のえさ」のアイツです。
冬水田んぼを実践している農家はイトミミズをとても大切にしています。抑草に役立つと考えられているからです。図1は、6月に田んぼにいたイトミミズの数と8月の雑草量の関係を示したものです。図では、1㎡当たり10,000匹を超えると、雑草量が大変少なくなっています。
イトミミズは、環形動物に属し、田んぼにいるのは主にユリミミズ(Limnodrilus sp.)と思われます(写真1)。
たくさん増えるとコロニーを作り、田んぼの表面にピンクの体を露出させます。写真2は、コロニーの様子です。これぐらいいると1㎡当たり10,000匹を軽く超えています。
露出しているのはおしりの部分で、頭は土の中。土中の未熟有機物を食べて、おしりから糞を排出します。これが積み重なってトロトロ層と呼ばれる有機物と粘土の混合層を形成します。トロトロ層が増えると、糞の下に雑草の種子を埋没させますので、抑草になると考えられています。
水槽でイトミミズを飼っていると、土が増える様子が観察できます。写真3は2012年12月から2月までのおよそ3ヶ月間、水槽で土の増える様子を観察したものです。黒塗りの部分がもとの土層(12月)です。多いところで30mmの増加が見られました。なお、イトミミズは土層に筒状の巣を作ります。そのため、筒の長さを測ると、活動域がわかります。この写真だと、深さ80mmと、かなり深くまで活動していることがわかりました。
イトミミズと間違えやすいのがユスリカ(Chironomidae)の幼虫です。同じように土壌表面にいる生き物ですが、こちらは昆虫です(写真4)。どちらも小さいので、肉眼では見分けにくいのですが、イトミミズはニョロニョロ動き、ユスリカはピンピン跳ねますので、慣れればすぐわかるようになります(^o^)
ユスリカは初夏の頃、水田に見られる「蚊柱」のもとになる昆虫です。こちらはトロトロ層の形成には役に立ちませんが、コウノトリの餌になるカエルのそのまた餌になると言われています。でも、田んぼを歩いていて蚊柱の中に突っ込むのはうっとうしいですよね。