病害虫防除所の業務を紹介します
「病害虫防除所」という名前を皆さんご存じでしょうか?聞き慣れない方もいらっしゃるでしょうが、当センター周辺道路にある県立施設の案内看板には、センターとともにその名前が載っています。事務所は当センター本館にあります。といっても、単独ではなく病害虫部がその組織を兼ねています。
防除所は各都道府県に必ず設置するように国が法律で定めた組織で、兵庫県には昭和27年、県内19か所に設置されたのが始まりです。昭和62年に県に1か所に統合されて、開所された当センター内に移転しました。平成14年には病害虫防除部(当時)としてセンター内部の組織に組み込まれました。
防除所の主な仕事は、作物に被害を及ぼす病害虫の発生を調査し、その発生程度・時期を予測し、その情報を迅速に関係機関に提供することです。そして発生に応じた防除指導を実施することで、農作物の安定生産と環境創造型農業の推進・指導に役立っています。
害虫の色々な調査方法についてご紹介します。写真1は、イネの株元にいるウンカなどの害虫を払い落として、その種類や数を調べています。これ以外に捕虫網でイネにいる虫をすくいとって調べる方法もあります。
「飛んで火に入る夏の虫 」ということわざをご存じでしょうか。危険な状況に自分から進んでいくことのたとえですが、昆虫は光に向かって飛んでいく習性を持つことからできたことわざです。この習性を利用して虫の発生時期・量を調べるのが予察灯です(写真2)。これでイネを始め、色々な作物に寄生する害虫類の発生状況を調べます。
また、虫のオスはメスの出す誘引物質(性フェロモン)にひかれてメスに近づきます。その物質は基本的に同じ種類の虫だけを誘引します。その性質を利用して化学的に合成したフェロモンを利用して、虫の発生状況を調べるのがフェロモントラップです。写真3はネキリムシとして知られるカブラヤガという蛾のトラップです。
これらのデータを毎年集め、平年値を算出するなど解析して、気温・降水量など気象条件を加味し、さらに病害虫防除員・農業改良普及センター・農業共済組合等から提供された情報も活用しながら精度の高い発生予測をしています。その結果、重要な病害虫が多発すると予測される時には、程度に応じて注意報や警報を発表します。
さらに、防除所ではイネ縞葉枯病ウイルスのヒメトビウンカ保毒虫率調査、いもち病耐性菌検定等の重要な病害虫の防除指導、まん延防止対策も実施しています。また、ウメ輪紋ウイルス(PPV)を始め、各種の検疫対象病害虫の発生調査も実施しています。