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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は 農業技術センター 農産園芸部 研究主幹 松浦 克彦が担当します。

いのちのバトンタッチ

総合センターの敷地には水田、果樹園、ガラスハウス等があり、そこには様々な農作物が栽培されています。この時期(8月)は、水田では稲の穂が顔を出し、花を咲かせ(写真1)、ハウス内ではイチゴが株からランナーと呼ばれるツルを伸ばし、子苗を増やしています(写真2)。

   
(写真1)花が咲いた稲の穂
(写真2)ランナーを出して子苗を増殖中のイチゴ

このような光景を見るにつけ農業は、種子や分身(栄養繁殖)の形で命を次世代へバトンタッチすることにより営まれており、工業などにはない側面を持っていることを改めて認識させられます。営々として引き継がれてきた植物の命を守り育て、そこから我々も生きる糧を得ていると思うと、農業というのはなんと素晴らしい産業でしょうか!

ところで長年栽培に携わっていると、栽培には、水、光、肥料などが当然必要なのですが、それだけでは足りないように思えることがあります。科学的にみれば、植物の生長に必要な水や光、肥料等を与えれば十分なので、研究者が何をバカなことをいっているのだと叱責されるかもしれません。確かに植物が大きくなるためには水や光等があれば十分なのですが、日々植物に接していると、そこには慈しみや一種の愛情に似た感情を植物に注いでいるのも確かです。単なる物ではない、生きものを扱っていることによる感情でしょうか?

以前、農業大学校の学生実習を担当することがあり、作業をしている学生に「愛情を持って栽培しなさい」と言ったりもしていました(実際は、あんまり真剣に言うと学生に変に思われるので、言うのはたまでした)。実際、愛情を持って接していると、植物の少しの変化(異常)や病害虫の発生に気づき、早く対処できることが往々にしてあり、やはり愛情は必要なのだと一人で納得していました。

さて農業で一番の喜びは、手塩にかけて栽培した植物が、ようやく収穫を迎えるときではないでしょうか。それまでの作業のしんどさも吹き飛んで、やっぱり農業にかかわる仕事をしてきてよかったなとつくづく感じる瞬間です。

農業では収穫の喜びがある一方、作柄は自然環境に大きく左右されるため、その時々の気象条件や生育状況に応じて適切な栽培管理を行うのは並大抵のことではありません。農業にたずさわる方々の苦労を察しながら、自分の仕事が少しでも貢献できればと考えています。