すべては研究開発から・・・
私の研究の専門は「花」です。そこで話題をひとつ。カーネーションの切り花は日持ちが長いことで知られています。2週間、冬場ならそれ以上に花が楽しめます。しかし、本来カーネーションの日持ちは1週間程度なのに、何故でしょうか。それは生産者が出荷する前に切り花に水と一緒に銀を吸わせることで、老化ホルモンであるエチレンの作用を阻害して花が萎れることを抑えるためです(写真)。この技術は兵庫県が実用化しました。ご存じでしたか。
私たちが現在の生活で当たり前と思っていること、おいしいお米はコシヒカリ、昔に比べたら苦くないピーマンやニンジン、クリスマスに食べられるイチゴ、冬野菜のホウレンソウが夏にある、秋の花なのにキクが花屋で一年中咲いている、など・・・他にもたくさんあります。これらを実現したのはすべてが全国の農業研究に携わる人達による技術(育種)開発なのです。
作物はもともと人間が食し、あるいは利用しやすいように野生種が改良されて成立してきました。野菜や果物であればおいしい、花であれば綺麗、長持ちする。さらに生産者の視点からは、たくさん収穫できる、栽培し易いなどです。農業研究の目指すところは、作物の持つ能力を最大限に余すことなく引き出すところにあると、私は考えています。それは種類ごとの生理、生態を解明し、土壌改良、養水分管理、病害虫防除、環境制御、開花調節など好適な栽培条件を創り上げていくことです。さらに、もっと優秀な品種を生み出すことも必要です。
兵庫県立農林水産技術総合センターは、県民の皆様を始め国民皆様の心身ともに豊かで安全な生活を支えているという強い意識のもと、日々研究に取り組んでいます。そして、多くの人々にその取り組みを知って欲しいとも願っています。