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センター雑感

当センターの各部署が順に担当して、季節の風景や出来事など様々な話題を紹介します。
今月は 森林林業技術センター 木材活用部 専門技術員 高瀬 光朗が担当します。

巨樹への誘い

「おお~~」(しばし沈黙)、「すごいな~~」(感慨にふける)、「よくがんばっておられますね~」

仕事柄、樹木に接することが多いのですが、中でも巨樹は別格です。畏敬の念を抱きます。堂々とした幹を手のひらで触れると、生命のパワーが伝わってくるような気がします。しめ縄が張られたご神木などであれば、なおさらです。

しかし、巨樹は永遠ではなく、時として枯れたり倒れてしまったりします。元気な樹ばかりではなく、樹勢が衰退し、治療を受けている巨樹も多いのです。よく聞くのは、昔に工事で太い根を大きく傷めてキノコの菌が入り、次第に蝕まれていく。また、人の出入りが多い場所では、表土が踏みつけられて固まり根が弱る。土の中なので見えませんが、樹木の健康に根はとても大事です。一方、地上の巨体を支えるのも根の仕事です。根の広がりは枝葉が広がっている範囲と同じ程度と思われるようですが、実はもっと広い範囲まで水分養分を求めて根を伸ばしているのです。

ところで、森林林業技術センターでは、樹木の根の研究もしています。樹木の根がどのくらい山崩れを防ぐ力があるのか。一般に根のはたらきについては、根が表土の下にある基盤岩の風化層や割れ目にくい込む杭効果と、隣り合う樹木の側根同士が絡み合うネット効果により、表層崩壊を起こりにくくしていると言われています。山の斜面を掘取って土壌の断面を出し、断面に現れる1本ずつの根を器具でつかんで引き抜ける力を測ります。それらを集計して断面での単位面積あたりの根の強さを知り、木々が斜面崩壊を防ぐ力を求めます。スギやヒノキの人工林であれば、適正な間伐を行うことで1本1本の樹が健全に成長して根も太くなり、崩壊に対して強い山になると考えられます。県土面積67%を占める広大な森林での「災害に強い森づくり」を考えて行く上で、樹木が山崩れを防ぐ役割を研究していくことは、大きな意義があります。

森林には土砂災害防止のほか、水源のかん養、地球温暖化防止、保健・レクリエーション、木材生産など様々な多面的機能があり、私たちの生活に安心と潤いを与えてくれます。森林でのリフレッシュは良いものですが、お出かけの際などに、巨樹を探して会いに行かれてみてはいかがでしょうか。インターネットなどで調べると、案外近くにあるものです。心に残る、ステキな出会いになるかもしれません。

   
斜面を掘取り、根の配置と太さを調べる
樹木根の引き抜き調査の様子
(左)森林林業技術センターのセコイア(宍粟市)(右)母校のクスノキ(第1回卒業生記念樹)
柏原の大ケヤキ(木の根橋)丹波市柏原町 幹径6.4m 樹齢1000年とも
杉の大杉(樹齢千年以上)高知県大豊町
明治神宮の大鳥居(国内最大木造鳥居) 柱の径1.2m  樹齢1500年のヒノキ