平成22年4月、家畜伝染病である口蹄疫が宮崎県で発生しました。
牛・豚の偶蹄類に発生するこの病気は、家畜伝染病予防法により発生した農場の家畜は全て殺処分、その後埋却等を行い病気の拡散を防いでいきます。
しかし、宮崎県での発生では、拡散を防ぐことができず約30万頭もの牛・豚が殺処分され、その中には宮崎県の黒毛和種の種雄牛も含まれていました。
兵庫県には、世界に誇る「但馬牛」が飼育されています。その「但馬牛」は優れた肉質など卓越した遺伝形質を持ち、和牛の改良基礎牛として、全国の肉用牛改良に重要な役割を果たしています。また、肥育素牛として「神戸ビーフ」を始めとした各地の高級銘柄牛の産地づくりに貢献するなど、全国的に見ても極めて特異な産地を築いてきました。
その但馬牛の種雄牛は、県立農林水産技術総合センター(以下、総合センター)が管理していることから、万一総合センターに口蹄疫等の重大家畜伝染病が侵入すれば、種雄牛を含む全ての牛を殺処分せざるを得ず、他県産の種雄牛では代替えできない但馬牛は、その維持・存続が困難となります。
そのため、将来にわたって遺伝資源を守り、神戸ビーフの供給力の強化を図るために重要な家畜防疫対策に取り組んでいますので、紹介します。
北部農業技術センターでは、平成29年度から畜産エリアに病原体を侵入させないため、衛生管理区域内・外と区域を明確に分けた施設整備を実施しています。
まず1つ目は、更衣消毒施設です。
外部者及び職員が畜産エリア内に入る時は、更衣消毒施設で外服を脱ぎ微酸性水消毒液のエアーミストで消毒を行い、畜産エリア内専用の作業服等に着替えます。口蹄疫の国内発生時は、シャワーで体に付着しているウイルスや細菌を洗い流した上で、専用作業服に着替え作業を行うことで、人による病原体持ち込みの防止を図ります。
次に、飼料・おが屑搬入施設です。
外部から持ち込まれる飼料やおが屑などは、一旦この施設に搬入しオゾン消毒を行った後、畜産エリアで利用することになります。
3つ目は、堆肥搬出施設です。
堆肥は、畜産エリア外のほ場散布や一般譲渡など畜産エリア外での利用となることから、衛生管理区域の境界にこの施設を設置し、区域内外で使用する車輌を明確に分離することで、病原体の侵入を防止します。
整備後は、遺伝資源の保護、管理をしていくための家畜防疫対策の強化を図るとともに、但馬牛が末永くトップブランドとしての地位を維持していくため、改良対策(美味しさと肉質や増体性に優れた種雄牛)を進めていきます。