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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は農業技術センター 主席研究員 松本純一が担当します。

各種ラインアップがそろった兵庫の小麦

兵庫県の小麦の作付面積は約1,850haで、全国第18位、近畿地方では滋賀県と並ぶ産地です(2017年産)。本県の小麦の奨励品種は2000年代前半までは「シロガネコムギ」のみでしたが、本県でも特産のしょう油原料やパン用に適した品種を求める声が実需者や製粉会社から出てきました。

そこで、それらの要望に応えるために国の研究機関等が育成した小麦品種の中から本県で選定した品種を紹介します。

◆「ふくほのか」:うどん用、製粉性(高製粉歩留、低灰分)や製めん性(色、食感(滑らかさ、粘弾性))がよい。「シロガネコムギ」に比べてほぼ同熟の早生で、約1割多収で外観品質も同程度で良好です。やや低アミロースで、特に「ゆでうどん」の粘弾性に優れます。

   
写真1 各品種から作ったうどん(左:ASW、中央:シロガネコムギ、右:ふくほのか)

◆「ゆめちから」:しょう油用、タンパク質(うまみ成分のアミノ酸)の含量が多い。「シロガネコムギ」と比較して成熟期が9日遅く、収量は概ね「シロガネコムギ」と同程度で、子実タンパク質含有率が高く、しょう油醸造性の他、製パン適性も高いです。

◆「せときらら」:パン用、タンパク質(グルテン量)の含量が多く、製粉性、製パン性(容積、焼き色、すだち、色、食感)がよい。「シロガネコムギ」に比べてほぼ同熟の早生で、収量は多く、やや低アミロースで、子実タンパク質含有率は「ゆめちから」より低いものの、穂が出そろった頃に肥料を与えれば12%程度となります。製パン適性は「ミナミノカオリ」より優れます。

   
写真2 各品種から作ったのパン(上段)とその内装(下段)
(ともに左:ミナミノカオリ、中央:ゆめちから、右:せときらら)

◆「セトデュール」:パスタ用、高タンパクで、製粉性(セモリナの生成効率高い)やスパゲッティにするときの製めん性がよい。日本で初めて育成されたパスタ用小麦系統(デュラム小麦)です。「シロガネコムギ」と比較して成熟期が6日遅い品種です。収量性はかなり高く、千粒重は「ゆめちから」よりかなり大きいです。セモリナの生成率が高く従来の普通系小麦よりもパスタ適性が優れます。

   
写真3 ほ場での「セトデュール」と各品種の子実
(左より、セトデュール、シロガネコムギ、ゆめちから)

現在、「ふくほのか」は冷凍うどんの製品が、「ゆめちから」はしょう油の原料として加工されて、それぞれ市販されています。「セトデュール」も地域ブランド、ナショナルブランドとして市販が始まっています。「せときらら」は作付面積の拡大により学校給食のパンへの利用が始まろうとしています。