pH降下型肥料によるレタスビッグベイン病の軽減技術
兵庫県は全国第5位のレタス産地で、淡路島で生産が盛んです。低温期に発生するビッグベイン病という病害があります。レタスの葉脈が太くなり、葉が縮れ、発病が激しくなると小玉化、さらには結球しないことから経済損失は大きい病害です。土壌を介して他の株に伝染していくため、防除対策も難しい病害です。
生産現場では、耐病性品種(症状が発生しにくい性質を持つ品種)や、土壌消毒、殺菌剤の灌注などを実施し、発病を減らす取り組みがされていますが、いずれも労力やコストがかかり、生産を難しくしています。
このビッグベイン病は土壌のpHを低くすると発病が減少することが知られていました。
当センターでは、ジェイカムアグリ株式会社と神戸大学と共同研究を行いました。肥料の組成を変えて土壌のpHを降下させる肥料を多数試作し、室内試験、ほ場試験でレタスビッグベイン病を軽減できるものを選抜しました。ビッグベイン病の原因となるウイルスを媒介する菌が、pH6.0以下になると活動が低下することと、レタスの生育がpH5.5以下では悪くなることから、目標pH5.5~6になるように設計されています。(図2)。
平成29年度に南あわじ市内のレタス生産ほ場で比較試験を行った結果を図3に示しています。慣行肥料を使った区に比べ、レタスビッグベイン病の発病度(発病程度を段階別に調査し、数値化したもの)が、軽減されていることが分かります。
pH降下型肥料は、コストも慣行肥料とほぼ同等で、労力的にも慣行とまったく変わらないため、農家にも環境にもやさしい技術といえるでしょう。今年度も生産ほ場での試験を行っており、平成31年度には実用化される見込みです。
この成果の一部は内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産創造技術」(管理法人:農研機構 生研支援センター)によって実施されました。