次世代のスギ造林品種を探す
スギは日本の林業にとって重要な樹種です。育てやすく、利用しやすいために、戦後の拡大造林期に多くのスギ人工林が造成されました。当時に造成したスギ人工林の大半が収穫期を迎える中で、収穫後にはどんなスギ品種を植えればいいのでしょうか?
収穫までの年月や地球温暖化を考えると、成長量(炭素固定量)は優れている必要があります。また、木材利用を考えれば、材質も優れていなければいけませんし、社会問題化しているスギ花粉症対策を考えれば、花粉量も少ない方が望ましいです。
このような成長量、材質、花粉量の優れたスギを「特定母樹」として農林水産大臣が指定しています。そこで本年度より「特定母樹」を選抜するための調査を開始しました。
調査は、44年前にスギ精英樹の優劣を検定する目的で造成された次代検定林(写真1)で行いました。過去に選抜された精英樹の中から、次世代の精英樹として「特定母樹」を選抜するのが狙いです。次代検定林内の全個体を三次元計測し(図1)、成長量を調べてみたところ、成長量には大きなばらつきがみられました(図2)。
「特定母樹」として指定するためには、成長量が周辺個体の1.5倍以上であることが必要です。三次元計測で取得した立木位置図(図3)を基準に、周辺個体との成長量を比較したところ基準を満たす個体は複数在りそうです。
今後は、成長量の基準を満たした個体の剛性、雄花着生性を調査し、「特定母樹」となり得るスギ品種を選抜していく予定です。