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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は農業技術センター 主任研究員  黒田 英明が担当します。

小さなクリの木の下で~(^O^)/~♪♪♪
‐栽培の省力化に適した‘わい性台木’の選抜‐

“大きなクリの木の下で~♪あなたとわたし~♪仲良く遊びましょ~♪…”

皆さんはクリの木をご覧になったことはあるでしょうか?まさに童謡「大きなクリの木の下で」にも歌われているように、クリ(栗、学名:Castanea crenata)は、ブナ科クリ属、落葉広葉樹の高木で、高さ20m、幹の直径60㎝くらいのものが多く、条件によってはそれ以上に大きくなる樹木です。

   

兵庫県では、丹波地域の「丹波栗」、阪神地域の「北摂栗」が全国的にも有名ですが、生産者にとって、すぐに高木化してしまう木を管理がしやすい高さで、果実(クリ)を多く収穫することは意外と難しく、樹木にとって最適な剪定技術が求められます。そこで私は、大きくなりやすいクリの木をコンパクトなサイズにする栽培管理技術の開発に取り組んでいます。

本来大きく育つものを、コンパクトなサイズに抑えることを「わい化」といいます。しかし、樹木をそのまま「わい化」させることは、その木の遺伝的な特性を変化させる必要があることから非常に難しく、わい化効果を示す「わい性台木」を利用するのが一般的です。

クリの苗木で用いる台木は、一般的に入手しやすいクリの実(品種はこだわらない)を土に播種して育てた苗木を台木として使い、その台木に美味しい品種(栽培品種)の枝を接ぎ木して苗木を作ります。

「わい性台木」から採れる実を用いて繁殖する場合、この実は様々な別の品種の花粉が掛け合わさってできたもので、わい性の形質を持っていない可能性があります。また、クリは枝から直接根を出させる挿し木等で繁殖することが大変難しいとされています。そこで、わい化効果があると思われる木の枝を、台木と美味しい品種との中間挟んだ二重接ぎ木苗を採用し、わい化技術を開発することとしました(図)。

   

2019年の試験では、6種類のわい性台木を中間台木として用い、その苗木のわい性程度を検定しました。結果、‘N’を中間台木として用いた苗木が中間台木の無い苗木と比べ、台木、穂木の幹周(太さ)や新梢(新しい枝)の発生が明らかに少なく、総新梢伸長も小さくなる傾向があることからわい性効果が高いことが分かりました(表)。

   

一般的に果樹のわい性試験は、わい化効果、果実の収量・品質も評価を行うため、長期間(10年程度)同じ樹木で調査を行います。生産者の方々が、管理が行いやすい樹木のサイズで良質なクリが多く収穫できるクリの木を創る研究に取組んでいます。