大豆ほ場におけるやっかいな雑草たちの退治法
1 はじめに
近年の大豆作では、経営規模拡大に伴う省力栽培や、豪雨や異常高温などの極端気象の影響を受けて、いわゆる難防除雑草(ホソアオゲイトウ、ヒロハフウリンホオズキ、帰化アサガオ類など)が収穫期まで繁茂するようになってきました(写真1)。これらの草種は、従来の除草剤施用体系では防除効果がかなり劣ることがわかっています。なかでも、狭条密播栽培は、条間(畝間)を25~30cmに設定して中耕培土による除草作業を省略する栽培体系で、雑草防除は除草剤処理にほぼ依存しています。そのため、除草剤の効かない難防除雑草が増加して、収穫作業能率の低下や収量・品質が著しく損なわれる事例が増えているのです。特に、帰化アサガオ類は大豆の播種時期から収穫前まで生育期間を通して発生するうえに、つる性植物で生育や種子形成が旺盛なことから、手取り除草以外の方法で徹底防除することが非常に困難な状況です。そこで、これら難防除雑草の発生を徹底的に抑えるための新たな除草剤施用体系を検討しました。
2 内容
大豆栽培に使用可能な除草剤は、一般的に下記の3種類に分かれます。
ア)大豆の出芽前に、土壌に全面処理して雑草の発生を抑える「土壌処理剤」。
イ)大豆が生育しているときに、茎葉を含む地上部に薬剤を全面処理して雑草だけを枯らすことが可能な「選択性茎葉処理剤」。
ウ)作物、雑草に関係なく、薬液が付着すると枯れてしまう「非選択性茎葉処理剤」。乗用管理機などで吊り下げノズルを用いて、大豆の畦間だけでなく株間まで適切に薬剤を処理する「畦間・株間処理」に使用可能な薬剤があります。
大半の雑草はア)の土壌処理剤で防除できますが、難防除雑草は土壌処理剤による除草効果が低く、イ)やウ)の茎葉処理剤が必要となります。そこで、従来から使用されている選択性茎葉処理剤「ベンタゾン液剤」や非選択性茎葉処理剤「グルホシネート液剤」に加えて、新たに使用可能になった土壌処理兼茎葉処理剤「フルチアセットメチル乳剤」及び選択性茎葉処理剤「イマザモックスアンモニウム塩液剤」の防除効果を検討しました。その結果、「フルチアセットメチル乳剤」は、ホソアオゲイトウ、ヒロハフウリンホオズキの幼苗を枯らしますが、帰化アサガオ類には、葉を痛めるだけで、再生して「つる」の伸長が旺盛になります。一方、「イマザモックスアンモニウム塩液剤」も同様に帰化アサガオ類を枯らすことはできませんが、「つる」の伸長を強く抑制し、その効果はある程度持続することが明らかになりました。これらの結果をもとに、帰化アサガオ類を含む難防除雑草に対して、下記の薬剤を適切な施用時期に処理することで、難防除雑草の徹底防除が可能となりました(図1)。
※大豆(狭条密播)栽培の播種後から本葉5葉期以降にかけて使用する薬剤順序と処理方法
- 大豆出芽前:土壌処理剤の全面処理
- 大豆出芽揃(そろ)い期: イマザモックスアンモニウム塩液剤の全面処理
- 大豆3~4葉期: ベンタゾン液剤の全面処理
- 大豆5葉期以降: グルホシネート液剤の畦間株間処理
3 徹底防除体系のポイント
上記の除草剤施用体系において、徹底防除を図るための要点は以下のとおりです。
(1) 帰化アサガオ類の幼苗期にイマザモックスアンモニウム塩液剤を処理すると、アサガオの「つる」伸長を強く抑制します。この除草剤体系では、その伸長抑制効果を有効に活用することが必須です。
(2) 畦間・株間処理では、非選択性茎葉処理剤の「グルホシネート液剤」を使用します。薬剤が作物に付着しないよう作業精度を高めるために、大豆の条間を「40cm」に設定して、散布ノズルを適正に配置します。
(3) 雑草の再発生を抑えるには大豆茎葉の被陰力がとても重要ですので、大豆の斉一な苗立ちと、健全な生育が得られるように努めます。