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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は但馬水産技術センター 主席研究員 川村 芳浩が担当します。

兵庫県日本海で採れる魚 「脂ののり」の季節変化を調べる

魚の「旬」は何をもとに決めているのでしょうか。魚の「おいしさ」や「旬」の判断をする基準の一つに「脂ののり」があります。「脂ののり」とは、魚の脂肪の量(脂肪含量)を指しますが、これまでは実際の脂肪含量を測定することなく、経験や感覚により判断されてきました。そこで、但馬地域(日本海)の家庭でよく食べられている魚の脂肪含量を季節ごとに測定して「脂ののり」を数値で裏付けることにより、脂が最も良くのっている季節「旬」を示すことができました。
 また、市販の魚用簡易脂肪計を使用して、但馬地域の魚2種類が脂肪含量を測定できるようになりました。

1.但馬地域の魚の脂肪含量季節変化

・ハタハタの脂肪含量の季節変化

   
ハタハタ

ハタハタと聞くと秋田県などの東北地方をイメージされる方が多いと思いますが、実は兵庫県日本海側での漁獲量は日本トップクラスなのです。但馬地域では、鮮魚や加工品(主に一夜干し)として流通します。
 ハタハタの脂肪含量の季節変化は以下のようになっており、「脂ののり」からみた旬は春であることがわかりました。

   
上左:図1、上右:図2、下:図3

・アカガレイの脂肪含量の季節変化

   
アカガレイ

アカガレイは、但馬地域では最も庶民的なカレイです。鮮魚や一夜干しなどの加工品として流通します。
 アカガレイの脂肪含量の季節変化は以下のようになっており、「脂ののり」からみた旬は冬であることがわかりました。

   
上左:図4、上右:図5、下:図6

・ニギスの脂肪含量の季節変化

   
ニギス

ニギスも、但馬地域では非常に庶民的な魚であり、但馬地域では「キス」や「沖ギス」と呼ばれて親しまれています。
 ニギスの脂肪含量の季節変化は以下のようになっており、「脂ののり」から見た旬は夏であることがわかりました。しかし、但馬地域の沖合底びき網漁は6月~8月は一斉休漁しますので、食べることのできる時期で最も脂がのっているのは、休漁が明けた9月、つまり秋口ということになります。

   
上左:図7、上右:図8、下:図9

2.簡易脂肪計での脂肪含量測定

市販の魚用簡易脂肪計で、但馬地方の代表的な魚の脂肪を測定できるかを検討した結果、ハタハタとアカガレイについては測定が可能であることがわかりました。

   
左:図10、右:図11

以上のように、但馬地域日本海で採れる魚の「脂ののり」から見た旬を把握し、また簡易脂肪計で数値として客観的に確認することより、加工・流通業者さん等が原料特性に合った利用方法の選択をできるようになります。また、漁協等が「脂ののり」をもとに魚に付加価値を付けたり、地域のイベント等でPRする材料として活用できます。