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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は但馬水産技術センター 研究員 森 俊郎が担当します。

ナルトビエイで“革製品”と“加工食品”をつくる試験をしました

兵庫県の瀬戸内海沿岸では、毎年5~11月にヒレの幅が1m以上の大きな“ナルトビエイ”が群れで来遊し、アサリやカキの食害が起こっています。 これを防ぐため、地元漁協がナルトビエイの捕獲を開始、たつの市商工会がそれを有効利用する事業を始めましたが ・ ・ ・

   

この事業をすすめる中で次のような課題が出てきました。
 ① ナルトビエイは大型で重く、身と皮が強く付着しているため、包丁を使って手作業で皮を剥がすにはかなりの力と手間が必要でした。
 ② このため、ナルトビエイを利用するには、皮を剥がす時に機械を使うなど、手作業以外の効率の良い方法の開発が必要なことがわかりました。

   

そこで、魚体処理機を扱う機械メーカーの西日本ニチモウ(株)と東亜交易(株)の協力を得て、薄くて軟らかい魚やイカの皮を剥ぐ時に使うスキンナーと、厚くて硬い牛や豚の皮を剥ぐときに使うスキンナーのいいところを組み合わせてナルトビエイの皮を剥ぐ試験を行いました。
 機械メーカーの工場と但馬水産技術センターの加工実験棟で繰り返し試験を行った結果、ナルトビエイの皮を“そぎ取る”ことができる切れ味の良い刃を使い、ローラーの爪を大きなものに変更し、回転を遅くすることで、これらの課題を解決できることがわかりました。
 その結果、手作業で1尾当たり 10分以上かかっていた皮剥ぎ作業が、スキンナーに乗せるだけの作業で5秒以下に短縮できました。

   

さらに、この方法で採取した皮と身は、手作業で採取したものより大きく、傷が少ないため、革製品や加工食品の原料として利用できる品質の良いものでした。

   

今回の試験で採取した皮は、たつの市のなめし革加工業者が“なめし革”に加工し、革製品の加工業者が“革製品”に仕上げました
 また、身は“料理素材”としても注目されているので、缶詰・レトルト食品製造会社が“缶詰め”や“お惣菜”などの加工食品にしました。 

   

2020年には、漁業者が漁獲したナルトビエイを、(社)農水産物生産供給認証機構が一次加工(皮を剥いで身を採取)し、地元企業が革製品や加工食品をつくり、たつの市商工会が、革製品は「Mitsu Eagray」、食品は「瀬戸内 シーレイ」としてブランド化しPRを行っています。そしてこれらは2021年から販売を開始する予定です。