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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は農業技術センター 主任研究員 宗田 健二が担当します。

いちじく新樹形「オーバーラップ整枝」の普及を進める取り組み

 兵庫県は出荷量全国第3位(2017年産、第94次農林水産省統計より)のいちじく産地だということはご存じでしょうか?本県で主に栽培されているいちじくは「桝井ドーフィン」(写真1)という品種で、温暖な気候を好み、夏に雨の少ない瀬戸内式気候の地域が栽培に適しています。そのため本県のいちじくの多くは県南地域や淡路島で栽培されており、産地が神戸、大阪等の大消費地に近いことから、その果実は完熟いちじくとして高く評価されています。

   
写真1 いちじく「桝井ドーフィン」の果実

 現在私は、本県で2012年から開発が進められ、本年2月に特許取得されたイチジクの新樹形「オーバーラップ整枝」(写真2、(特許6840311号、開発者:松浦克彦(現、農産園芸部長))を用い、県産いちじくのブランド力の向上と生産拡大を進める研究を行っています。具体的には以下の内容について検討しています。
(1)着果の安定、収穫期の前進化および収量の増加が可能な栽培方法
(2)着色や糖度といった果実品質を向上させる栽培方法
(3)オーバーラップ整枝の栽培管理指標の作成

   
写真2 オーバーラップ整枝

 これまでの研究で分かったことは、つぎのとおりです。
(1)オーバーラップ整枝では、いちじく栽培で広く普及している「一文字整枝」(写真3)に比べ、収穫時期が前進化するとともに収量が増加する(図1)。

   
写真3 一文字整枝
   

(2)株元から樹の骨格となる主枝に至るまでの主幹(図2)の長さを長くすると、着果が始まる節が低くなり着果率が向上する(表1)。

   
   

(3)果実品質については、透湿性白色マルチを畝と通路に被覆することで、果実はやや小さくなるものの、収穫期間を通して着色と糖度が向上する(表2)。

   

 今後、オーバーラップ整枝における適切な樹間や主枝の長さについて検討を進め、これまでの結果も踏まえ、栽培管理指標としてまとめる予定です。