表面侵食で森林再生がピンチ!
~埋土種子からみた森林管理方法の提案~
【背景と目的】
森林の手入れ不足により林内が真っ暗になり、下層植生の減少と裸地化が各地でみられ、表面侵食による土地生産力の低下が進んでいます。
ところでこの表面侵食は、森林を再生するのに役立っている埋土種子の流出をもたらすことから、その森林の再生能力も低下していることが予想されます。
そこでその実態を明らかにするために、流出する土砂中に含まれる埋土種子量を測定するとともに、流出先の環境条件(水分条件)における埋土種子の発芽能力を調べました。
【得られた結果】
1.多くの埋土種子が流出土砂中に含まれており、斜面部から谷部へと流出している実態が明らかになりました。
2.斜面部から流出した埋土種子が土壌水分の高い谷部に到達すると、発芽率は低下するものと推測されました。
【今後の展望】
調査結果から、表面侵食が森林の再生能力を低下させていることがわかりました。この低下を防ぐには、土壌中に含まれる埋土種子の流出を抑制する森林管理が必要です。
兵庫県では、県民緑税を活用して緊急防災林整備を実施しています。
(http://web.pref.hyogo.lg.jp/af15/af15_000000009.html)
この森林管理では、スギ・ヒノキ間伐林を対象に、間伐木を利用した土留工を設置することにより(写真)、土砂流出を抑制しようとするものですが、この森林管理によって、森林の再生能力も高めることが期待できます。
私たちは、この他にも、森林で起こっているさまざまな現象の観測や解析を行い、森林管理の提案に役立てる試験研究を行っています。