牛にもあった!?「おふくろの味」
牛は主に草などの「粗飼料」と、とうもろこしや大豆糟などの「濃厚飼料」を食べて大きくなります。肉用牛の子牛は7~9か月齢になると子牛市場に出荷され、肥育農家に買われていきます。子牛市場において、1日あたりの増加体重が大きい子牛ほど高く売買される傾向があることから、過肥子牛(太りすぎの子牛)の上場が増加するという問題があります。過肥の子牛は肥育中期以降にエサを食べなくなったり、脂肪壊死症という病気になりやすいのではないかと言われています。子牛の時期に「濃厚飼料」をたくさん与えすぎると過肥になってしまうことから、十分な量の「粗飼料」を食べさせることが大切です。しかし、子牛は濃厚飼料の方を好んで食べるため、粗飼料を食べさせることは簡単ではないので、子牛に十分な量の粗飼料を食べさせる技術が求められています。
以前の「私の試験研究」のコーナーで紹介させて頂きましたが、①子牛は1種類の草だけでなく、複数種類の草を給与する方が「粗飼料」をたくさん食べること②発育のステージによって好んで食べる草が変わることが分かりました。
そこで今回は、②の発育ステージでなぜ好んで食べる草が変わるのか?について調べました。子牛にはチモシー、オーツヘイ、ペレニアルライグラスストロー(以下、ペレニアルと略します)と、粉砕ヘイキューブの4種類を給与して、どの草をよく食べたか比較しました。
子牛は一般的に、ほ乳中は母牛と同居し、離乳後は子牛だけで飼養されます。飼養状況の違いと日齢の違いが子牛の草の好みにどう影響しているかみるため、母牛と150日齢まで同居させた子牛と200日齢まで同居させた子牛で草の採食量を調べました。試験期間中、母牛にはペレニアルを給与しました。同居期間にかかわらず、同居中はペレニアルを56.9%と48.1%と最もたくさん食べたが、母牛から離れると、1週間で約5%に減少し、チモシー、オーツヘイが増加しました。子牛が好んで食べる草は同居期間や日齢に関係なく、同居している母牛に与えている草に影響を受けると考えられました。また、母牛の影響は離れてからも、1週間ほど残っていました。子牛に十分な量の粗飼料を食べさせるためには、草そのものの美味しさや品質だけでなく、母牛へ給与している草の種類も考えて給与するとよいでしょう。