トップページへ

私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は淡路農業技術センター 畜産部 主任研究員 山口 悦司が担当します。

受精卵移植による乳牛改良

乳牛は、産業動物であるため産乳能力が高く、体の作りが丈夫で長く生産し続けることができるなどの能力が求められます。そこで、今いる牛に生産能力の育種価が高い種雄牛を交配し、母牛より能力の高い次世代の乳牛を生産することを改良と言います。

今日の乳牛改良は、雄側からの凍結精液による人工授精と、雌側からの受精卵移植により行われています。淡路農業技術センターでは、高泌乳牛の増頭と酪農家の収益向上を目指し、平成5年度から受精卵移植事業に取り組んでいます。

その結果、県下に後継雌牛として、これまでET産子やその系統牛が362頭血統登録され、それらは酪農家の牛群内で能力が高く、改良基牛として利用されています。

また平成11年度からは、当センターの(旧)生物工学研究室が開発した、受精卵の雌雄判別技術及び凍結保存技術を利用した雌判別受精卵の供給に取り組み、県下の酪農家に供給しています。

1 受精卵を県下に供給した供卵牛

平成5年度以降、北米や北海道等から血統の有名な高能力牛を供卵牛として導入し、それらから採卵した受精卵を県下の酪農家に供給してきました。

   

【 ウインドミア ローテート シーダー 】
北米輸入牛で、この牛の系統牛が県下に125頭、生産されている。

【 レディスマナー ラブリー パラダイス】
北海道導入牛で、育種価が非常に高いファミリー牛。本牛も最高順位が全国44位。

【 オムラ スイーティー キャロウェイ 】
北海道導入牛で、育種価が非常に高く、全国的にも今最も注目度の高い系統牛の1つ。

2 雌判別受精卵の作出方法

通常の受精卵の採取は、より多くの受精卵を回収するため、過剰排卵処理として供卵牛に3~4日間、朝夕2回ホルモン注射を行って発情を誘起して人工授精を行い、発情後7日目に子宮から受精卵を回収します。更に雌雄判別する場合は、顕微操作で回収した約200μmの大きさの正常受精卵を切断して、移植胚と検査用サンプル細胞に切断分離し、サンプル細胞のDNAから受精卵の性別をPCR法(遺伝子増幅による診断法)により判定します。その結果「♀」と判定された受精卵をガラス化保存し、後日移植時にこれを融解し、発情後7日目の受卵牛(借腹牛)に移植し、受胎すれば、雌牛を生産することが出来ます。