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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は森林林業技術センター 木材利用部 主任研究員 石坂 知行が担当します。

木材の寸法変化

木材は空気中の水分を吸放出するため,湿度によって含水率が変化し,それに伴って寸法も変化します。湿度が下がると水分を放出して収縮し,湿度が上がると水分を吸収して膨張します。木質の内装材を多く用いることで,湿度の急激な変化が緩和され,快適な住環境が得られますが,同時に収縮すると目地が開いてゴミがたまりやすくなったり,膨張すると収まりきれなくなってめくれ上がったりといった問題も生じます。特に最近は住宅の高気密化が進み,炊事等で生じた湿気を逃がしにくい上,エアコンを長時間運転するため,室内の湿度は大きく変動します。エアコンは冬場,乾燥した外気を温めて,夏場は逆に湿った外気を冷やして室内に取り入れるため,吐出口付近は,冬場は10 %RH以下,夏場は95 %RH以上にもなります。また,昔の住宅は木造で土壁,漆喰などと言った調湿作用のある建材が多く用いられていましたが,最近はコンクリートやプレハブに,ビニルタイルやプリント合板,石膏ボードといった新建材が多用され,このことも湿度変動を激しくする一因となっています。

実際に室内の湿度はどの程度変化するのでしょうか?職員の自宅(瀬戸内側,RCマンション3F)の居間に,センサ,データロガを設置して,年間の温湿度を測定しました。最も湿度の変動が著しかったのは3月下旬から4月上旬までで,外気の気象条件に加え,炊事やエアコンの影響で30~90%RH程度まで小刻みに変動しました(図1)。

次に,π(パイ)型変位計と,人工的に温湿度を制御できるチャンバーを用いて内装材(スギの高温乾燥材)の寸法が,どれくらい変化するかを調べました(図2)。日本の平均温湿度に近い20℃,70 %RHの雰囲気で十分養生したサンプルを20 ℃,30 %RHと20 ℃,90 %RHのチャンバー内に入れて,含水率と寸法の変化を測定したところ,30%RHでは含水率が約6 %低下して寸法が約1.2 %,90 %RHでは含水率が約5 %上昇し,寸法が約1.1 %変化しました(図3,4)。寸法変化の状況は,樹種や製品の仕上がり含水率,心辺材,矢高,乾燥方法などによっても異なりますが,内装材を用いる際はある程度の寸法変化を見越した施工をすることで,不具合を最低限に抑える必要があります。

   
左:図1 室内の温湿度(2011.3.30~4.3)、右:図2 π型変位計
左:図3 30 %RH調湿時の寸法変化、右:図4 90 %RH調湿時の寸法変化