サーモグラフィを使うと見えないものが見えてくる ―イチジクの凍害の話―
兵庫県のイチジクは栽培面積が65haで全国4位、収穫量が1,326tでともに全国4位(特産果樹生産動態等調査、平成21年)です。イチジクは実は知る人ぞ知る、兵庫県の特産品なのです。県南部や淡路地域がイチジクの主な産地ですが、これらの産地では一部の温暖な地域を除き、寒さによる被害(以下、凍害とします)に悩まされています。
凍害の被害はいろいろですが主には写真1に示すように、枝の上面の組織がやられ大きくへこんでしまいます。このようなことを繰り返すと太い枝全体が枯れたり、カミキリムシ類の格好のえじきになり、枝がぼろぼろになってきます(写真2)。
県内で主に栽培されている「桝井ドーフィン」が比較的低温に弱いことが知られています。このため、産地では冬期に稲わらを巻いたりして防寒して凍害を防ぐ努力をしています(写真3)。
冬期に実際に樹の温度がどのようになっているかは、温度計で測定するのが一般的です。しかし、この場合その部分の温度しかわからないことが欠点でした。ところが最近テレビなどでよく見かける「サーモグラフィ」という装置を用いると、表面温度が色分けして画面に表示されるので視覚的にとらえやすくなります。
図4は夜間に人を撮影したものですが、場所によって表面の温度に差があるのがよくわかります。
さて、図5はイチジクの枝の部分を撮影したものですが、上の部分が青色であるのに対し、下半分はオレンジ色で温度の違いがはっきりとわかります。つまり同じ枝でも場所によって温度に差があり、上面が特に冷えることがサーモグラフィによって分かるわけです。
じゃあ地表はどうかというと、図6で示すように、わらを敷いた部分は青く、何も無い部分は赤く温度の高いことが分かります。実は、地表面は意外と温度が高いことが分かります。
このように、サーモグラフィを使うと表面温度が一目瞭然で、どの部分がよく冷えるかがよくわかり、凍害対策のアイデアが浮かんでくるわけです。