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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は農業技術センター 農産園芸部 主任研究員 水谷 祐一郎が担当します。

着色が良くかつボリュームを出すポットハボタンの肥培管理

兵庫県の花壇苗の出荷量は、2,880万鉢で、全国第6位(平成23年)の主要な生産県です。また品目別に見ると、最も出荷量が多いのがハボタン(ポットハボタン)で、兵庫県の特徴的な品目となっています。

これまで、当センターでは、ハボタンのブランド化を目的として、高品質商品の生産技術開発等を行ってきました。ここでは、品質向上のための肥培管理技術を紹介します。

ハボタンは秋から冬にかけて葉が紅色や白色に着色します。商品として求められるポイントに、「葉色が美しく着色部の面積が大きい」ことと、「株のボリュームが大きい」ことがあげられます。

葉の着色とボリュームには、栽培時期の後半に施用する施肥量が影響します。施肥量が多いと緑色部分が残り着色部の面積が小さくなります。一方、施肥量が少ないと下葉が落ち、ボリューム不足となってしまいます。肥培管理が難しく、品質が安定しにくかったことから、適正な施肥量、方法について検討しました。

葉の着色と施肥量の関係については、着色部率(着色部の最大径/株幅×100)40%以上(11月30日時点)を商品の基準と判断すると、総窒素量が240mg以下(3号鉢当たり)では基準以上になりました(図1)。一方、480mg以上では着色の進行が遅く、施肥量が多すぎることがわかりました。

   
図1 施肥量によるハボタンの着色のちがい(品種「晴姿」、3号鉢を利用)

次に、生体重60g以上を商品の基準として、株のボリュームを確保するための施肥量と方法を検討した結果、総窒素量が480mg、960mgでは基準以上となりましたが、120mgでは生体重が不足し、施肥量が少ないことがわかりました(図2)。また、240mgの場合、10月31日まで施肥を続けると基準以上となりましたが、10月15日で打ち切ると生体重不足となりました。

   
図2 施肥量によるハボタンの生体重のちがい(11月30日調査、品種「晴姿」、3号鉢を利用)

以上の結果から、総窒素量が480mg以上では、生体重は大きいものの着色部の面積が小さくなり、120mgと少なければ、着色部の面積は大きいものの生体重が不足します。すなわち、追肥の適正な総窒素量は240mgであり、さらに10月末まで追肥を続けることで、品質の安定化を図れることがわかりました(写真)。

   
写真 施肥量によるハボタンの着色および生育のちがい(品種「晴姿」、3号鉢を利用)写真左から、窒素濃度・施用頻度・施肥終了日(総窒素量/鉢)→生育の結果は、
  • 100ppm・週2・10/31(120mg) → × 生体重の不足
  • 400ppm・週1・10/31(240mg) → ○
  • 400ppm・週2・10/31(480mg) → × 着色部の面積が小さい

店頭の商品を見てみると、着色を気にして追肥を控えたため、下葉が落ちボリュームの小さい商品が目立つことがあります。窒素400ppmという濃度は、標準的な濃度より濃いですが、ハボタンには十分な追肥が必要であることがわかりました。10月末までしっかり追肥をすることが大切です。