カタクチイワシの仔魚は何を食べているのか
カタクチイワシは日本海、瀬戸内海に広く分布します。本県瀬戸内海域では、シラスはイカナゴとともに船曳網漁業の重要な漁獲対象種です。私が昨年度まで水産技術センターで担当していましたが、2000年以降の漁獲量は3,800~15,700トンの間で推移し、年による変動が大きくなっています。
本県瀬戸内海域で漁獲されるシラスの9割以上は全長20mm前後に成長したカタクチイワシです。カタクチイワシは、卵からふ化すると、数日間の前期仔魚期を経て後期仔魚へと発育します。この段階で眼が見えるようになり、外部(海水中)の餌を食べるようになります。しかし、1~2日の間に餌を食べられないと死に至ることが飼育実験で明らかにされており、仔魚期の餌料環境を調べることは近年の漁獲量の変動を解明する上で重要と考えられます。そこで、まず、本県瀬戸内海域で発生した後期仔魚が何を食べているのかを調べてみました。
播磨灘、大阪湾、紀伊水道の各海域においてプランクトンネットで採集した全長2.8~10.6mmの後期仔魚について、消化管の内容物を調べました。その結果、播磨灘では、カイアシ類*と呼ばれるグループの中でもパラカラヌスやオイトナのノープリウス*を食べている仔魚が多いことがわかりました。大阪湾や紀伊水道で採集した仔魚についても播磨灘と同様の結果が得られたことから、本県瀬戸内海域ではパラカラヌスやオイトナのノープリウスがカタクチイワシ後期仔魚の初期餌料として重要な役割を果たしているのではないかと考えられました。今後は、天然海域におけるパラカラヌスやオイトナのノープリウスの発生量とシラス漁獲量との関係を調べていきたいと考えています。