「水稲鉄コーティング湛水直播栽培」の留意点
水稲湛水直播は代かき状態の圃場に直接種籾を播種する栽培方法です。育苗にかかる手間や経費の削減効果が高いですが、収量の高位安定化を図るには、「苗立ちの確保」「雑草防除」が重要なポイントとなります。現在、過酸化カルシウムを主成分とする酸素供給剤を種籾に被覆して土中播種する技術(カルパー直播)に加えて、微鉄粉を種籾に被覆して土壌表面に播種する「鉄コーティング湛水直播(鉄粉直播)」が開発され、栽培技術の確立が求められています。「カルパー直播」は、カルパー(酸素供給剤)を被覆した種籾を専用の播種機を用いて0.5~1センチの深さで土中に播種します。一方、「鉄コーティング直播」は、鉄粉を被覆した種籾を土壌表面にそのまま播種します。そのため、播種後の出芽から苗立ちにかけての水管理方法が異なります。カルパー直播では落水して出芽を促す「落水出芽」方法が一般的ですが、鉄コーティング直播では出芽(発芽)を促すためには播種直後から湛水状態を保つ必要があります。図1に、播種前後における水管理等の留意点を示しました。
種籾を土壌表面に播種する鉄コーティング直播栽培では、播種直後に除草剤を散布して湛水状態を保つことが必須となっていますので、除草剤の成分が発芽する種籾に直接作用することが考えられます。そこで、この播種方法で使用可能な3種類の除草剤について、その後の生育や収量に対する影響を調査しました。鉄コーティング直播方法の苗立ちはカルパー直播に比べてやや遅く、草丈も小さく推移しますが、その後回復し、収量への影響はほとんどみられません。したがって、これらの除草剤を活用することで、鉄コーティング直播における雑草防除がより的確に実施できるようになりました(表)。
両播種方法とも雑草防除が収量確保の重要なポイントになりますので、以下のように、除草剤の使用方法や水管理方法にくれぐれも留意してください。
- 苗立ち確保:種籾の被覆資材に対応した専用播種機の有効利用
- 雑草防除:除草効果の高い新規除草剤の利用促進
- ほ場の水管理:苗立ち確保と雑草防除の両立を図る。