べと病・・・人工培養できないカビ・・・
農作物などの植物の病気は、80%以上はカビが病原体です。その大半は、人工培地などの上で培養することができます。人工培養することができると研究が進めやすくなります。培地の上で培養することによって病原体の性質や薬剤感受性などを研究することができますし、大量増殖して圃場に接種することにより防除試験なども成功する確率が高くなります。しかし、一部には培養できないカビもあります。べと病菌もそのうちの一つです。
淡路島で栽培が盛んなレタス、はくさい、キャベツ、ブロッコリー、タマネギなどはいずれもべと病が問題になっています。べと病は漢字で書くと、露菌病と書きます。読み方からも漢字からも想像がつく通り、べと病菌はべとべとした湿気の多い結露しそうな環境を好みます。淡路島で野菜の定植が始まる秋は台風シーズンであるとともに長雨のシーズンでもあり、特に近年は晩秋になってからも雨天の日が多い年があり、そのような年は決まってべと病の発生が見られます。
レタスでは、11~12月頃に雨天の日が多いと本病の発生が見られます。その後、年末までの間にトンネル被覆が行われますので、年末までに発生が見られると、雨が少なくなってもトンネル内は高湿度である上、適度に温度が上昇しますので本病の発病に適した環境になってしまい大発生の原因となります。また、育苗はビニールハウス内で行われますし、毎日灌水しますので発生しやすい温湿度となる上、株間が混み合っていますのであっという間に蔓延してしまいます。その上、苗床での発病は葉裏のみにカビが認められることが多く、一見すると葉が黄化しているだけのように見えますので、肥料不足と間違われることもあります。このような、発病株を誤って定植してしまうと定植後に大きな被害となります。
防除対策としては、農薬の予防散布が有効なのですが育苗初期にレタスに殺菌剤を散布すると薬害が出ることが多く、農薬散布が難しい時期でもあります。そこで、育苗期間に健病育成することにより病害の発生を防ごうと、亜りん酸粒状肥料の利用技術を開発しました。育苗時の培養土にセルトレイ1枚あたり20gを均一に混和しておくと育苗期間中はほぼ完全に本病の発生を抑えることができます。また、抵抗性品種も一部利用することができます。本病は世界中で30以上のレースが報告されており、我が国で発生しているべと病菌も海外では報告されていないレースであることがわかりました。従って、抵抗性品種を利用する際もその抵抗性が完全ではないことを念頭において利用する必要があります。