小ギクをつぼみ期に収穫して人工的に開花させる技術
小ギク切り花の需要は盆、春秋の彼岸、年末(正月)などのいわゆる物日、また、農産物直売所などでは土日に集中します。しかし、自然条件での開花は時々の天候に左右され、早く咲いたり遅く咲いたりして、必ずしも出荷したいときに出荷できるとは限りません。そこで、小ギクを開花前のつぼみの状態で収穫し、専用の開花液と開花室によって、需要日に合わせて人工的に開花させて出荷する技術を開発しました(図)。
収穫はつぼみが「膜切れ」と呼ばれるがくが開裂して花の色が確認できる時期以降とします(写真①)。この時期から開花処理を始めると、25℃の温度条件では7日で開花します(写真②)。
つぼみ状態の切り花は水に生けているだけでは、商品価値のない悪い品質で開花してしまいます。そのため自然状態での開花と花の色や大きさ、日持ちが変わらない品質で開花させる専用の開花液が必要となります。開花液の組成は糖、エチレン作用阻害剤、界面活性剤および抗菌剤からなります。糖は花を大きく多く咲かせる、色を濃くする効果があります。エチレン作用阻害剤は葉の黄変を防ぎ、日もちを良くします。界面活性剤は開花液の吸収を促進し、切り花のみずみずしさを維持します。抗菌剤は開花液の腐敗を防ぎます。小ギクでは水1リットル当たりショ糖(砂糖)を30g、チオ硫酸銀錯塩(STS)を1.5ミリリットル(例:クリザールK-20Cの場合)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを主成分とした界面活性剤を1.5ミリリットル(例:グラミンSの場合)、8-ヒドロキシキノリン硫酸塩を0.2gとします。
開花室は作業場などの一画をビニールカーテンなどで仕切り、エアコンや白色蛍光灯を取り付けて設置します。光の明るさは800~1000ルクスとし、12時間照明します。温度は15~30℃の範囲とし、温度設定により開花速度を調節します。低温では開花が遅く、高温では早くなります。
さらに開花前のつぼみ期収穫のメリットとして「花に入る害虫の予防」「台風や高温・低温などの災害の回避」「栽培期間の短縮」などが挙げられます。