かびを食べるかびで病気をふせぐ
野菜類に発生する病気の一つに菌核病という病気があります。この病気はシイタケや松茸のようにキノコを作って、胞子(子嚢胞子)が飛散し病気を移していきます。また、土壌中にかびの大きな塊(菌核といいます。これがこの病気の名前の由来となっています。)を作って、土壌中に数年間生存しています。このかびはキャベツや他のアブラナ科作物だけでなく、ナス科、ウリ科、マメ科など多くの植物種を冒すことが知られていて、日本では約100種類ほどの作物の病原菌とされています。
菌核病は名前のとおり菌糸が作物にまとわりつき、作物体上にネズミの糞に似たカビの塊(菌核)を多数形成し、商品価値がなくなってしまい大きな被害を与えています。そのため、生産現場では化学農薬を使うのですが、食べ物ですのでやはりあまり農薬を使わずに済めば、地球にも優しく、生産者にも優しく、消費者にも優しい作物となります。
そこで、「かび」を食べる「かび」を使って、この病気を防ぐ試験研究を行ってきました。この病気を食べる「かび」は、元々、自然の土の中にいたものを利用するもので、化学農薬をできるだけ使わない防除法です。
試験例を一つ紹介します。上の写真はキャベツ菌核病を対象に試験をしている様子ですが、上の写真が何もしなかった試験区、下の写真があらかじめかびを畑に散布してキャベツを植えた試験区です。これを見ると明らかに食べる「かび」を処理した試験区は病気が減少しています。
このかびは生物農薬として農薬メーカーより販売されています。かびの生胞子をグルコースという砂糖の一種につけただけの農薬ですので、非常に安全です。ただし、かびといっても正式に農薬登録された農薬ですので使用条件等はラベルに記載のとおり行う必要があります。