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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は北部農業技術センター 畜産部 研究員 小浜 菜美子が担当します。

画像解析形質による但馬牛の改良-キメ細かな霜降り肉を目指して-

日本には多数の産地銘柄牛肉が存在します。その中でも、「神戸ビーフ」・「但馬牛」は厳密な認定基準によりブランド化を成功させてきました。更なるブランド力の強化を図るためにはニーズに応えた牛肉の提供が求められています。牛肉に対するニーズとして、味や価格、安全性はもちろんですが、見た目も重要な構成要素となります。当所が市場関係者に対し行ったアンケート調査の結果、同じ脂肪割合の場合、細かい脂肪粒子が多く粗い脂肪塊の少ない肉(=小ザシ)ほど評価が高くなる事が確認できました(図1)。

   
図1 アンケート調査の結果

小ザシ・粗ザシといった見た目を主観ではなく客観的に評価、比較するためには数値化する事が必要です。図2に示した枝肉横断面撮影装置を用いれば、全ての枝肉を同一条件で撮影することができます。撮影された画像を専用ソフトで解析することにより、ロース中の脂肪の面積割合、粗い脂肪塊の面積割合を示す「あらさ指数」と細かな脂肪粒子の数の割合を示す「細かさ指数」が算出されます。この二つの指数によりサシ形状を客観的に評価することが可能です(図3)。

   
図2 画像解析の方法
図3 解析数値によるロースの比較

「神戸ビーフ」・「但馬牛」のブランド力を強化するには、市場の求めるようなキメの細かい小ザシの霜降り牛肉を安定的に生産することが重要となります。そのために、二つの指数が但馬牛の改良に利用可能か検討したところ、父牛や母牛から子牛に、遺伝的に伝えられる情報量(遺伝率)は、あらさ指数が0.49、細かさ指数が0.38(1.00なら遺伝情報は100%伝えられる)と判明しました。これはすでに改良に用いられている産肉形質のうち、バラの厚さや枝肉重量の遺伝率と同程度になります。つまり、両指数を用いてサシ形状の改良が可能なことが示されました。

現在、兵庫県の基幹種雄牛の選抜時には産肉形質に加えて両指数の遺伝的能力も検討材料に含めています。小ザシ能力の高い種雄牛を選抜することにより、全国どこの銘柄牛よりもキメ細かな霜降りの「神戸ビーフ」・「但馬牛」を目指します。