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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は水産技術センター増殖部 主席研究員 二羽 恭介が担当します。

「役に立つカラフルなノリ」

陸上の作物では,掛け合わせによって多くの品種が作られています。ところが,養殖ノリでは,一枚の葉状体にオスとメスの生殖細胞が入り交じってできます。このため,交雑したかどうか確認が難しく,ノリでは交雑育種は,ほとんど取り組まれていませんでした。ところが,色変わりしたノリを使うと,色が目印となって,交雑の確認がし易くなります。そこで,突然変異技術で色変わりしたノリを作り出し,これを使ってノリでも交雑による新しい品種づくりに取り組んでいます。

   

養殖ノリの葉状体は成熟するとオスとメスの生殖細胞が形成され,受精すると葉状体とは形態の異なる糸状体に発達します。養殖ノリの葉状体は雌雄同株のため,正常な株同士を交雑させても、自家受精で生じた糸状体なのか,他家受精で生じた糸状体なのか,区別ができません。ところが,上の図のとおり,赤と緑の葉状体を掛け合わせると,糸状体の色で交雑の確認が可能になります。

   

養殖ノリの糸状体は成熟すると胞子を放出して,再び葉状体に生長しますが,赤と緑を交雑させた雑種糸状体からは,赤,緑,黄緑色,正常型の色彩をもった葉状体に生長しました。しかも,写真のとおり,一枚の葉状体であっても,複数の色をもった葉状体に育ちます。こうした葉状体はキメラと呼ばれますが,このキメラ葉状体のうち,正常な色をした部分を切り出し,成熟させて自家受精させることにより,正常な色をした新たな株を作り出すことができます。このような手法で,今後,ノリでも交雑育種が取り組めます。

【今後の展望】

本手法を使って生長の良いノリや色の濃い品種づくりに取り組んでいます。また,もし色変わりしたノリの味が良ければ,カラフルなノリであっても直接利用価値がでてきます。こうした可能性も考慮して、取り組んでいきたいと考えています。

【参考:養殖ノリの生活史】