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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は総合センター企画調整・経営支援部 普及部門 専門技術員 石黒 由起が担当します。

農家の6次産業化についての一考察

平成23年に「六次産業化法」が施行され、農業分野の6次産業化支援が強化されています。兵庫県は、六次産業化法に基づく総合化事業計画の認定は、現在100件があり、全国でも第2位の認定件数となりました。 このことは、本県には、農業経営を見直し、新しいことにチャレンジしたいという農業経営者が多いということを表しています。

この5年間の取り組み事例を基に、農業経営者が取り組む6次産業化のパターンについて、列記し、取り組みにあたっての注意点について整理しました。

   
工房 あか穂の実り 「もちもち玄米シート」(中央)

農業経営者が、一番取り組みやすいパターンですが、オンリーワンの商品開発が必須条件となります。「工房 あか穂の実り」の玄米シートは、玄米で作ったピザシートです。ピザの本場、ミラノ万博へ出展するなど、農業経営者自らが商品開発しました。

オンリーワン商品の製造現場において、衛生管理は当然のことですが、大手企業が常設しているクリーンルームやレトルト装置は高額なため、農業経営者にとっては導入が難しく、微生物の制御が行いにくいのが現状です。その部分に北部農業技術センター加工流通部の指導を入れ、危害分析と重点管理点の検討を行いました。小規模加工施設での品質管理について、ビニールカーテンでの浮遊菌の低減、空気清浄機の導入、アルコール資材の利用や加熱後の冷却処理の徹底により微生物を許容水準まで低減でき、小規模な施設においても加工製造が可能となりました。「もちもち玄米シート」は、2015モンドセレクション銀賞も受賞しています。

   
(有)夢前夢工房 そば乾麺

マーケットリサーチで商品開発し、地域内外の消費者や加工・業務用として商品開発をめざします。この取り組みは、高いマーケティング力、営業・販売力、商品開発力が必要です。 (有)夢前夢工房で栽培された水稲、大豆、そば、麦等を近隣の加工業者と連携して醤油、豆腐、納豆、乾麺等商品開発を進めています。

   
兵庫県産のジェノベーゼソース

1次、2次、3次産業全てが一丸となり、商品を生産、加工、販売します。事業規模は大きく、商品は国内外販売をめざします。集落営農を取り組んでいた(株)ささ営農は、前身ささ営農の時代に県のマッチング事業で(株)MCC食品と出会い、(株)MCC食品へのバジル出荷から始まり、(株)MCC食品との共同出資による「バジル工場」を設立しました。開発商品は兵庫県産バジルのジェノーベーゼソースとして販売されています。

3つのパターンにより、優良事例の取り組みとともに紹介しましたが、自らの経営状態とめざすべきところを明確にした上で取り組んでください。取り組み後、経営体としての売り上げが上昇しますが、経営が安定するどころか、経費がふくらみ、苦戦を強いられる場合もあります。取り組むには、確固たる農業生産面の基盤と資金が必要となります。