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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は淡路農業技術センター 農業部 研究員 中野 伸一が担当します。

気象変動に対応した露地野菜の安定生産技術の開発

【はじめに】

兵庫県では、淡路島を中心にたまねぎ(全国3位)、レタス(全国4位)、はくさい(全国11位)、キャベツ(全国11位)などの露地野菜の栽培が盛んに行われています。これらの露地野菜は、近年の気象変動によって、大雨や干ばつに遭遇することが多くなり、安定生産することが、だんだん難しくなってきています。天候不順で野菜の値段が高騰しているというニュースを耳にする機会も増えてきました。

そこで、大雨によってほ場が水に浸かってしまった場合の被害を軽減する技術を開発しました。また、今まで難しかった土壌の水分をコントロールし、計画的に野菜を植えたり収穫することが可能となる地下水位制御システム(以下、FOEAS)を利用した露地野菜の安定生産技術を開発しました。

【成果1】冠水の程度と被害の関係を明らかにし、事後対策として尿素のかん注処理技術を開発

レタス・キャベツなどの玉になる野菜は、水に浸かると浸かった時間によって、枯れてしまったり、玉にならないことがあります。また、生育のステージによっても、その被害は変わってきます(図1)。試験の結果、レタスやキャベツは、玉になる前(結球初期)まで、6時間までの冠水であれば、尿素をかん注処理する事後対策によって収量が回復することがわかりました。

   

【成果2】

地下水位制御システム(FOEAS)の導入により、排水改善と地下給水が可能となり、露地野菜の平畝栽培が可能となる

FOEASは、ほ場の地下に排水や給水を行うための管を通して、その管と地下水位をコントロールする水位管理器をつなぐことによって、雨が降れば排水し、日照が続けば地下から給水できる、新たな土壌水分のコントロールシステムです(図2)。兵庫県でも導入が進んでおり、兵庫県の実績では10a当たり平均34万円程度で設置されています。淡路農業技術センター内の試験では、FOEASを導入したほ場でタマネギを栽培すると、導入しなかったほ場と比べて1.7倍の増収効果が確認できました(図3)。また、排水が良くなることで、畝を立てない平畝栽培ができるようになり、従来の畝を立てる栽培よりも1.2倍増収することが分かりました。

   

【今後の展望】

冠水程度と被害の関係は、現地での植替えの判断指標として活用し、尿素のかん注処理については、事後対策のメニューとして栽培暦に追加される予定です。また、FOEASについては県内の淡路島以外の地域にも広がっており、今後は、品目に応じたFOEASの活用が期待されています。