林業活性化と森林の防災機能発揮を両立する森林管理技術の開発
~山の危険度などに合った林業を行う~
気候変動に伴う集中豪雨の増加等により山地災害の潜在的な発生リスクが上昇しています。一方で戦後植林されたスギ・ヒノキ資源の充実等により、今後森林伐採量の増加が見込まれています。林業活性化と森林の防災機能の発揮を両立する森林管理技術が求められています。
図1は、森林を収益性と危険度で5つに分ける考え方です。山地災害リスクの高低(横軸)、林業の収益性(縦軸)で森林を5つに区分するというものです。このような考え方は概念としては以前からあるのですが、これを実際に行った事例は僅かです。
そこで、これまで個別に検討されてきた山地災害防止に関する予測技術や危険地ゾーニング技術と、森林資源活用に関する計画・利用技術を融合した新たな森林管理技術の開発を、共同研究機関とともに行っています。森林GIS(地理情報システム)も利用し、危険度情報、森林資源情報、森林利用情報を重ね、最適なゾーニングを行う手法を開発します(図2)。
このような研究が行えるようになった背景の一つが、航空レーザー測量により詳細な地形情報が得られるようになったことです。航空レーザー測量とは、航空機からレーザー光を照射し、地上からの反射波との時間差から距離を求める測量方法です。兵庫県内でも1mメッシュの標高値(地盤高)が整備されています(まだ県の全域で整備されているわけではありません)。
この航空レーザー測量データの利用例を二つ紹介します。
図3は、傾斜区分図です。森林整備に必要な森林作業道等の路網配置検討のため、35度前後を細かく色分けしている例です。道の下側の勾配が35度を超えると崩壊リスクが急増します。
図4は、CS立体図です。このCS立体図は、長野県林業総合センターが開発した地形判読を容易にする立体図法です。航空レーザー測量による標高値から傾斜、曲率を算出し、それぞれ異なる色調で彩色し、重ねて透過処理することで微地形を立体表現しています。尾根(凸)地形は赤、谷(凹)地形は青、急斜面は濃い色、緩斜面は淡い色になります。災害危険地や路網配置の検討に利用できます。
研究は平成32年度までの計画で、県内の森林でも実証試験を行いながら開発を行っていきます。研究成果は、市町村森林整備計画や森林経営計画の策定支援技術として普及していく予定です。