水稲有機栽培における高性能水田用除草機の有効性
1 ねらい
兵庫県は「人と環境にやさしい農業」を推進しており、有機栽培もその中の一つです。水稲の有機栽培は、現在でも雑草対策が最大の課題で、代かきを何度もしたり、深く水をためるなど複数の技術を実施しています。
県北部では早生品種「コシヒカリ」で、冬期湛水などの水管理を中心とした抑草技術(コウノトリ育む農法)がほぼ確立しています。しかし、裏作やため池の多い県南部では同様の水管理は難しく、雑草対策に多くの課題が残されています。
そこで、近年、農研機構と農機メーカーが共同開発した高性能水田用除草機を利用した水稲有機栽培の抑草技術を検討したので紹介します。
2 高性能水田用除草機のしくみ
この除草機は除草部が車体中央部にあり、オペレーターは除草状況を確認しながら作業ができます。条間の雑草は駆動式ローターの爪が回転して除草し、株間は条の真上を太い針金状のツース4本が左右に揺動して除草します。
3 高性能水田用除草機による抑草効果
2年間の同一ほ場での結果は、雑草種子量が少なく、有機物施用、その後の深水管理により、非常に雑草は少ない状況でしたが、移植後約40日の雑草は機械除草で無処理より明らかに少なく、有効でした(表1)。
4 高性能水田用除草機による作業効率と生育、収量等への影響
今回のほ場では、直線部の作業速度は最高1.14m/秒、旋回に約50秒/回を要し、実作業時間より旋回時間が長くなりました(表2)。10a当たりの所要時間は約30分で、旋回回数が少ない場合はさらに短縮される見込みです。
機械除草による草丈等の生育への影響はほとんどなく、2年間とも収量、玄米の外観品質にも大きな差がありませんでした(図表略)。
5 今後の課題
高性能水田用除草機の抑草効果や作業効率の有効性は明らかとなりましたが、今後、雑草種子量が多いなど様々な条件におけるデータの蓄積を行い、その他技術と組み合わせた抑草技術体系の確立を図っていきます。