気化冷却と日射制御型給水を活用した底面給水システム
花壇苗や野菜苗の生産では、夏季は鉢の土が乾きやすく、水やりに多くの労力がかかります。また、高温により生育や開花が遅れることが問題となっています。そこで、自動で適正量の水やりができ、同時に高温を抑制できる底面給水システムを開発しました。
1 技術の内容
(1)システムの概要(図1)
高設ベンチ上に、透水シート、給水マットおよび防根シートを下から順に敷設し、その上に、点滴チューブを配置します(写真1、2)。ベンチ下周囲にはビニル幕を付け、送風機を設置します(写真3)。貯水タンク内に水中ポンプを設置して点滴チューブにつなぎ、水やりの間隔を制御する日射制御型給水装置およびソーラーパネルをつなげます。
本装置は農家が各資材を購入して自作することができます。
(2)水やりの方法
点滴チューブから給水マット上に少量ずつ水をしみこませ、鉢底の穴から鉢の土に水を吸収させます。水やりの量は日射量に比例して自動で決まり、日射量が多いほど水やりの量が多くなります。
(3)高温の抑制
高設ベンチの下部に風を送り、マットの水分が蒸発する際の気化熱により、鉢周辺の気温を低下させることができます。
(4)経費
主制御装置関係(日射制御装置、ソーラーパネル等)で約10万円、ベンチ装備関係(シート類、点滴チューブ、送風機等)で約12万円必要です(100㎡のハウス1棟で試算)。
(5)技術の適用場面
花壇苗、野菜苗で品目を問わず利用できます(写真4、5)。また、夏季に限らず年間を通じて利用できます。
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(下から、透水シート(白色)、給水マット(白色)、防根シート(黒色)
2 本技術導入の効果 (慣行:頭上からの手かん水との比較)
- (1)水やりの労力削減
- 約60時間→約3時間に削減(10a・1ヶ月当たり)
- (2)高温の抑制
- 鉢周辺の気温が最高で4℃程度低下します(図2)。
- (3)開花遅延を防ぎ早期の出荷が可能
- 例えばシクラメンの場合、開花が20日程度促進します(図3)。
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