生育調査をしておいしいキヌヒカリを作ろう!

農業技術センター作物部

澤田  富雄

 

  はじめに

    キヌヒカリは、良食味の極早生品種として1996年に兵庫県奨励品種(認定品種)に採用されて以来、着実に作付面積をのばし、平成15年度には11,414haに達し、コシヒカリの13,294haについで県下第2の作付面積を占めるまでになった。しかし、栽培面積が増加するにしたがって、キヌヒカリの品質、食味のばらつきが問題として顕在化し始めた。そのため、収量を高位に安定させつつ、良質、良食味化をはかるキヌヒカリの栽培法の確立が強く求められている。

  キヌヒカリのこのような問題を解決するためには、良質・良食味米としての品質、収量、米中タンパク質含有率の許容範囲を決定し、その許容範囲に入るよう、肥培管理により、生育を制御していく栽培法を確立する必要がある。

  また、兵庫県では、おいしい米の目標値を次のように設定している(兵庫県農林水産部農産園芸課編、米の食味と栽培改善に関する資料、12p)。

          白米中アミロース含有率20%以下、白米中タンパク質含有率6.0以下、

玄米中Mg/K当量比1.5以上

  そこで、キヌヒカリの品位、米中タンパク質含有率および収量に影響を与えている形質と時期を特定し、上記の目標値を基に、時期別の生育指標を策定することを考えた。

 

  生育指標とその内容

(1) 播種・移植期

現在、県内のキヌヒカリの移植期は、ほぼ6月上~中旬に集中していると見られる。コシヒカリで行った作期移動による品質向上対策は、県南部のキヌヒカリには、作柄の不安定化の懸念から困難と考え、移植時期は6月上旬に固定した。

 

(2) 成熟期の姿

 稈長、穂長、1穂籾数、登熟歩合、千粒重は、供試したキヌヒカリの平均的な値を用いた。収量、白米中タンパク質含有率は、穂数ならびに穂揃期の茎数、葉中窒素含有率から決定した。心白発生率は品位等級1等合格の観点から決定した。

 

(3) 穂揃期の姿

 穂揃期の葉中窒素含有率は米中タンパク質含有率と相関が高く、キャリブレーションは、年次によるBias&Skew(切片と傾き)の変動が小さい。ほぼ2.7%付近が白米中タンパク質含有率6%(玄米中7%)以下を達成するための上限と見られる(1)

生育指標の下限値2.4%は、キャリブレーションから、白米中タンパク質含有率5.5%(玄米中6.3%)を算出したもの。サンプル数は少ない。

  収量は穂数と相関が高く、穂揃期の茎数とも相関が高い(全体でr=0.733**)。

  収量560kg/10aを確保するには、栽植密度22.2株で25g/株程度の精玄米重が必要である。

  株当たり精玄米重は、年次によって変動があり(主にBias)、19992001年は20002002年に比べて同じ精玄米重を得るのに比較的多くの穂数が必要であった。すなわち、19992000年の両年は1穂当たりの収量が少ない。

  精玄米重25gを得るのに必要な穂数は、この両年では1718/株必要であったことから、生育指標では、18/株とした。また、2003年農技の22.2/㎡植えの平均的な茎数( 穂揃期)は18.5本である(図2

 

(4) 穂首分化期・幼穂形成期の姿

  各時期の茎数・葉中窒素の指標値は、上記の相関に基づき、幼穂形成期の指標は 穂揃期の姿から、幼穂分化期の指標は幼穂形成期の姿から算出している。

 

 (5) 移植期の姿

  健苗と考えられる一般的な苗の姿を参考に、農技の調査圃場に使用した120g播きの稚苗を調査して決定した。

 

 (6) 心白発生率

  心白発生率は密植(24.2/㎡)で低い(図3。なお、図3における心白発生率は目視判定によるもので、通常の検査では心白とカウントされない微少なものも含まれている。

  また、基肥窒素量の効果も大きい。密植(24.2/株)条件においても、基肥窒素量が多いと、茎数、穂数が増加している(図4。以上のことから、基肥窒素量の効果は、茎数、穂数を確保して、心白発生率を抑制することと考えられる。心白発生率の最も少ない基肥0.6kg/a施用区では、穂首分化期には、22/㎡程度確保されており、穂数は1819/株であった。

茎数は、穂首分化期から幼穂形成期にかけて増加することも多く、現地調査のデータなどから、最終的に穂数18本を確保するための穂首分化期の茎数は1522本程度と考えられた。

 

  普及上の留意点

  生育指標に記述されている基肥、追肥、穂肥の数値は参考値であり、実際の適用に当たっては、肥料の種類、土壌条件などを考慮する必要がある。

 

 

参考)

  葉中窒素含有率はサタケ製アグリエキスパート(CCN5000)を用いて測定しており、現場でよく用いられているミノルタ葉緑素計(SPAD502)のGM値からの変換が可能である。

穂首分化期~幼穂形成期

y=-3.751+0.181x

 

減数分裂期~穂揃期

y=-0.840+0.099x

 

y:葉中窒素含有率(CCN値)、xGM値)

 

 

 

 

 

 

参考図)穂上の心白発生頻度