目次
1 法人とは
2 農業法人とは
(1)農業生産法人とは
(2)農事組合法人とは
(3)特定農業法人とは
3 集落営農と法人形態
4 農事組合法人における留意点
5 法人の特典
・ 基本的人権の主体
・ 権利や義務の持つことの出来る地位(私権の享有)がある。
ア 公共法人 国、県、市町
イ 私法人 公益法人、中間法人、営利法人
公益法人 |
学校法人(私立学校) 宗教法人(宗教法人法) 社会福祉法人(社会福祉事業法) 民法の法人(民法) 日本赤十字 |
・社団法人 |
中間法人 | 労働組合(労働組合法) 協同組合(協同組合法) |
・社団法人 |
営利法人 | 株式会社(会社法) 合名会社(会社法) 合資会社(会社法) 合同会社(合同会社法) |
実質は社団法人と同じ扱い
預金は、代表者の肩書きでOK
土地・建物は、代表者の個人名義で信託的に登記するより方法がない
事例:学友会、社交クラブ、懇親会、農会組織、営農組合
内国法人 |
公共法人 公益法人 協同組合等 人格のない社団(みなし法人) 普通法人 |
外国法人 |
昭和32年まで収益事業についても課税されなかった。
シャウプ税制勧告(昭和25年)・・・収益事業課税(昭和32年)
収益事業の限定列挙(33種) 物品販売 物品貸付業 請負業
農業法人とは農業を営む法人の総称である。
農業生産法人は、農業法人のうち農業経営を営むために農地を取得できる法人であり、下記の要件を全て満たす必要がある。
ア 法人形態要件
下記の表参照
イ 事業要件
農業及び関連事業が、総売上高の過半を占めること
ウ 構成員要件
法人に農地の権利を提供した個人
法人の農業の常時従事者
法人の事業と継続的に取引関係にある個人、法人
その他
エ 業務執行役員(経営責任者)要件
農業生産法人の業務執行役員の過半数の者は、法人の農業(関連事業を含む)常時従事者であり、かつ、その過半数を占める
業務執行役員の過半数の者がその法人の行う農業に必要な農作業に年間60日以上従事することが必要である。
農事組合法人は、さらに理事は農民であることが要件となる。
農業法人形態
農業法人 (農地取得なし) |
株式会社(会社法) 合名会社(会社法) 合資会社(会社法) 合同会社(合同会社法) 農事組合法人(協同組合法、1号法人) |
|
農業生産法人 |
株式会社(株式譲渡制限あり) 合名会社 合資会社 合同会社 農事組合法人(2号法人、1・2号法人) |
農業生産法人の中で特定農業法人は、農用地利用集積を引受けることが出きる。 |
農業生産についての協業をはかることにより、その共同の利益を増進することを目的とした法人組織で、下記の事業の全部
又は一部を行うことができる。
1号法人…非出資制はこれのみ
農業に係る共同利用施設の設置(当該施設を利用して行う組合員の生産する物資の運搬、加工又は貯蔵の事業を含む。) 又は農作業の共同化に
関する事業
2号法人…出資制をとらなければならない
農業の経営(その行う農業に関する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他省令で定める
もの及び農業と併せ行う林業の経営を含む。)…2号法人…出資制をとらなければならない
1・2号法人…出資制
1号法人と2号法人の事業を行う法人
特定農業法人とは、担い手不足が見込まれる地域で、将来、当該地域の農地利用の過半を担う法人として、地域合意の下に その位置付けが明確化 され、かつ、このことについて市町村の認定を受けた農業生産法人のことである。(農業経営基盤強化促 進法第33条第4項
集落営農組合が、株式会社、合名会社、合資会社になる可能性は今後とも低い。
となると、法人組織として可能性のあるのは、農事組合法人(協同組合法)と合同会社(合同会社法)である。
そこで、人格なき社団であるところの営農組合と前2法人との比較を行い、そのことにより法人化のメリット・デメリットの理解促進につなげていきたい。
*** このテキストにおいて、協同組合等に該当する農事組合法人とは「法人税法第2条第7号に規定する協同組合等に該当する農事組合法人」のことをいう。
集落営農と法人形態
人格なき社団であるところの営農組合 | 農事組合法人 | |||
目的 | 農事組合法人に準じる | 農業生産の協業による共同利益 | ||
構成員 | 農民3人以上 | |||
役員 |
理事は農民であること 理事任期は3年以下 監事は、組合員以外の者でも可 |
|||
出資者 | 組合員 | |||
出資金 |
総額は限度なし 組合費、賦課金等会費運営が基本 |
総額は限度なし 出資1口の金額は均一で金額の定めなし。 1人50%を超えて出資口数は取得できない。 |
||
議決権 | 1人:1票 | 1人:1票 | ||
特別決議 | 3分の2以上同意 | |||
責任 | 農事組合法人に準ずるものと思われる。 | 賦課金、出資額を限度とする。 | ||
定款の公証人による認定 | 必要なし | |||
登記 | なし | 法務局、兵庫県 | ||
設立登記・定款変更登記の登録免許税 | 非課税 | |||
協同組合等に該当する農事組合法人 | 左記以外の農事組合法人 | |||
出資額に応じた配当 |
利益配当(組合側) |
利益配当(組合側) |
利益配当(組合側) |
|
従事分量配当 |
損金扱い(組合側) |
|||
事業分量配当 |
損金扱い(組合側) |
|||
農地及び権利の取得 |
代表者の個人名義で信託的に登記 |
農業生産法人の場合取得可能 |
||
従業員年金制度 |
国民年金 |
確定給与支払型農事組合法人では、農林年金 そうでない場合は国民年金、農業者年金に加入 |
||
労災加入 |
可 |
不可 |
||
補助金により取得した固定資産について | 補助金収入の益金不算入 | メニューにより圧縮記帳 | ||
青色申告制度 | あり | あり | ||
法人税率 |
収益事業課税 年所得 800万以下 22% |
22% 給与支払型農事組合法人では、普通法人と同じ |
||
事業税 | あり | 農業生産法人の農業は非課税 |
法人税法第2条第7号に規定する協同組合等に該当する農事組合法人と、そうでない農事組合法人とでは、税務上及び社会保険制度適用上大きな違いがある。
農業協同組合法 第2章の2 農事組合法人 第1節 通則 第72条の6 (非課税) |
|
農事組合法人(法人税法第2条第7号に規定する協同組合等に該当するものに限る。)が、組合員のその事業の利用
分量の割合又は組合員がその事業に従事した程度に応じてなした剰余金の配当に相当する金額は、同法の定めるとことにより、
当該農事組合法人の同法に規定する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。 |
|
法人税法 法人税法第2条 (定義) |
|
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 7 協同組合等別表第三に掲げる法人をいう。 別表第三 協同組合等の表(法人税法第2条関係) 農事組合法人(農業協同組合法第72条の8第1項第2号(農業の経営)の事業を行なう農事組合法人でその事業に従事する 組合員に対し給料、賃金、賞与その他これらの性質を有する給与を支給するものを除く。) |
|
法人税法第61条(協同組合等の事業分量配当等の損金算入) | |
協同組合等が各事業年度において支出する次に掲げる金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。 1 その組合員その他の構成員に対しその者が当該事業年度中に取り扱った物の数量、価額その他その協同組合等の事業を利用 した分量に応じて分配する金額 2 その組合員その他の構成員に対しその者が当該事業年度中にその協同組合等の事業に従事した程度に応じて分配する金額 |
|
法人税法基本通達 第2節 協同組合等の事業分量配当等及び特別の賦課金 第1款 事業分量配当 |
|
基本通達14-2-4(漁業生産組合等のうち協同組合等となるものの判定) 漁業生産組合、生産組合である森林組合又は農事組合法人で協同組合等として法第61条 《協同組合等の事業分量配当等の損金算入》の規定の適用があるものは、これらの組合又は法人の事業に従事する 組合員に対し、給料、賃金、賞与その他これらの性質を有する給与を支給しないものに限られるのであるが、その判定に当たっ ては、次に掲げることについては、次による。 (1)その事業に従事する組合員には、これらの組合の役員又は事務に従事する使用人である組合員を含まないから、
これらの役員又は使用人である組合員に対し給与を支給しても、協同組合等に該当するかどうかの判定には関係はない。 |
つまり、法人税法第2条第7号に規定する協同組合等に該当する農事組合法人についての利点は、税制面において、 従事分量配当及び事業分量配当が農事組合法人の損金になることによる節税効果と、法人税率が一律22%と定率であること、そして、当該法人が農業生産法人であり且つ農業部門を事業としている場合に事業税が非課税になることである。
反面、社会保障制度面においては、農作業に従事する構成員に対して労災保険の適用が出来ず、1人親方型の労災保険に個別で加入するより他に手立てがなく、組織の代表者としてはあまり目指したくない組織形態である。
反対に、同じような組織形態であっても、構成員に給与等(時給含む)を支払うかたちの農事組合法人では、上記税制面での特典は受けられない。(事業税については同じ)
しかし、社会保障制度面においては労災加入が可能となり、安心して経営が行なえる。
それでは、給与支払型農事組合法人と農業法人である合同会社とどう違うのかと問われると大変困るのであるが、強いて言えば登記登録時に低コストで済むということぐらいである。
あとどうしても時給を払いつつ従事分量配当を行い、法人税法第2条第7号に規定する協同組合等に該当する農事組合法人としての税制上の特典を受けたいのなら、時給を従事分量配当が確定するまでの間仮払金として処理するより仕方がない。
ただし、その時給が仕事の内容によって単価差があったり、従事分量配当の確定をしなかった場合の判断については、所轄 税務署の法人税第1課審理部門に確認してください。
・法人化のメリットは、税務署の洗礼を受けることにあり。
・役員報酬の損金算入が認められている
・使用人兼務役員賞与の損金算入が認められている。
・役員退職給与金の損金算入が認められている。
・経営者の責任の明確化とともに経営者意識が高まる。
・コスト意識が高まる。
・各個人の役割の明確化
・出資金を拠出することにより、組合員の経営への意識が高まる。
その他の留意事項
・人格なき社団では、資金が借りられなくなった。
・労災には入りましょう。
・相続税、贈与税の納税猶予地を、農業生産法人に対して利用権の設定をしたら、納税猶予の措置は解除される。