センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 北部農業技術センター所長 武田 和士 が執筆しました。

試験研究機関の使命の1つに「開かれた試験研究機関」というのがあります。
 県民の皆様方に気軽にお越しいただいて、研究の成果を広く知って理解していただくことは非常に重要であり、研究員にとっても、県民の皆様からいろんなご意見等をいただくことで、新しい取組につながったり励みにもなります。
 そういう意味で、当センターでも、毎年、ふれあいデーを開催しております。
 今年も、先月21日、13回目の「北部農業技術センターふれあいデー」を開催しました。日頃の研究成果の展示のほか、兵庫県産牛や焼芋などの試食、農産物などの販売、子供たちのゲームコーナー等、約3,500人の方にお越しいただき、楽しんでいただきました。また、当センターでは、常時、見学者等の受け入れを行っておりますので、皆さん、ぜひ、お越しいただいて、兵庫県農林水産業に関する研究にご理解をいただきたいと思います。

<ふれあいデーの風景>

姫路方面から、播但自動車道路で北へ向かい、和田山料金所を越えて、最初のトンネルを抜けると、それまでの山ばかりの景色と違い、眼前にきれいに整備された法面とその上に茶色の屋根の建物がいくつかある景色が現われます。
 これまでに気づいた方がおられるかもしれませんが、ここが北部農業技術センターです。
 昨年、北近畿豊岡自動車道が和田山まで開通し、春日から和田山まで遠坂トンネル以外は無料のため、丹波地域からも遠坂トンネルの料金300円だけで、安く早く来れるようになりました。

当センターは、敷地面積約73haと、農林水産技術総合センターの所属組織の中でも最大の規模を誇っており、但馬・丹波地域の特産作物の品種選定や栽培に関する技術開発、但馬牛の改良及び効率的な飼養管理技術の開発等を行っています。

その中で1つの目玉は、なんと言っても「但馬牛」の改良です。
 今から、約700年前、鎌倉時代の末期に、日本全国の牛を評価し優秀な牛10頭を記録に残した「国牛十図」の中に「但馬牛」の記載があります。
 「但馬牛 骨ほそく宍かたく 皮うすく背腰まろし 角蹄ことにかたく はなの孔ひろし 逸物おほし」
 これは、但馬牛の特徴を記載したもので、骨が細く(体の割りに足が細い)、体が引き締まっており、皮下脂肪が少なく、背腰にデコボコが少ない。また、角や蹄が非常に硬く鼻の孔も広く、優れた牛が多いというふうに解釈でき、当時から但馬牛は秀でた存在として注目を集めていたことが窺えます。
 ただ、当時は、牛を食するという習慣がなかったせいか、おいしさの点には触れられておらず、これらにおいしさを加えたものが、現在の「但馬牛」の特徴になっています。

先月のこのコーナーでも紹介がありましたが、全国各地のブランド牛の素牛である「但馬牛」。おいしさは保障付ですが、体が少し小さめのため、肉質、肉量ともに優れた牛を育成することが1つの課題となっています。そのため、当センターで約500頭の牛を飼育して研究を行っており、職員は、土日も関係なく牛の世話を行うなど、愛情を持って牛を育て、牛も愛くるしい仕草で擦り寄ってきます。

今後とも、優秀な種雄牛を選抜・育成することに努め、世界に冠たる「但馬牛」の維持・発展を図っていきたいと思います。