センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 但馬水産技術センター   所長 廣瀨 和孝 が執筆しました。

ハイテクが守る船の安全安心

今回は、漁業調査船の安全運航について紹介します。

当センターで定めた「漁業調査船たじま安全運航マニュアル」には、それぞれの職員が責任を持って分担する職務等を細かく定めています。もちろん、いざという時の非常配置や訓練(船では「そうれん操練」と言います)のことも決めています。

ところで、船舶の遭難通信SOS、モールス信号の「トトト・ツーツーツー・トトト」が10年も前に廃止されていることをご存じだったでしょうか?

1999年2月から、GMDSS(世界海洋遭難安全システムGlobal Maritime Distress and Safety System)と呼ばれる国際的な取り決めに基づいて、最先端のハイテク技術を駆使した装置が搭載され、遭難警報の発信受信や海上安全情報の入手が自動的に行われるようになっているのです。

船舶の種類、大きさ、航行海域等によって設備が決まっており、本県の漁業調査船「たじま」では、概ね次のような装置を搭載しています。

DSC無線装置(Degital Selective Calls デジタル選択呼出聴守装置)

デジタル通信で陸上及び船舶に遭難信号を発信します。交信したい局を選択して呼び出すこともできます。聴守装置は、遭難・安全・緊急信号を自動で聴取し、重要な通信はアラームで知らせてくれます。
 写真の赤い部分のボタンを押すだけで、海上保安庁や漁業無線局、船舶局等に遭難信号が発射され、状況を知らせることができます。

イーパブ E-PIRB (Emergency Position Indicate Radio Beacon 非常用位置指示無線標識装置)

通信衛星にむけて遭難警報を発信するブイ方式の無線装置で、船が突然沈没した際に自動的に浮上して、電波を発射します。衛星を利用するので、地球上のどこから発射されても、場所が特定されます。
 写真は、イーパブを収納したボックスで、一定の水深になると自動でイーパブを放出します。もちろん手動操作も可能です。

レーダー・トランスポンダー(SART: Search and Rescue Radar Transponder)

捜索救助船や航空機からのレーダー電波を受信すると自動的に応答信号波を発射し、捜索側のレーダー画面に遭難位置を表示して知らせます。
 退船して救命いかだ等に乗り移る時には、必ずこれを一緒に持ち込みます。

持運び式双方向無線電話装置

遭難現場において、主として生存艇(救命艇,救命いかだ等)と救助船との間、生存艇相互間などの連絡通信に使用される小型の無線電話の送受信機です。
 どの国の救助船とも通信可能で、退船する時には必ず携行します。

インマルサット船舶地球局(海事衛星通信装置)

静止衛星インマルサットを使用し、遭難通信を含む情報を船舶と陸上との間で直接交信します。
 南極、北極以外の地球上のほぼ全域において、信頼性の高い通信が可能です。

ナブテックス受信機 NAVTEX(Navigation Telex 海上安全情報受信機)

海岸から300海里以内を航行する船舶に向けて放送されている海上安全情報を自動的に受信し、内蔵のプリンタで印字するものです。
 航行警報・気象警報等の海上安全にかかわる情報を確実に受信できます。

世界共通の海上遭難安全システムGMDSSにより、遭難信号の発射はモールス信号を使わないで機械的に自動化されましたが、これまで同様に最寄の海上保安庁、海岸局、船舶局との交信が大切なことに変わりはありません。