センターからひとこと

(当センターの所長、次長、各技術センター所長等が順に執筆します。)
今月は 水産技術センター 増殖部長 近藤 敬三 が執筆しました。

魚類疾病対策について

今回は水産技術センターの魚類疾病対策について紹介します。
 マダイやコイ等の魚類には、赤潮や水質悪化による健康障害をはじめ、細菌や寄生虫による疾病があり、大被害となることもあります。このような疾病に対して、適切な魚病診断によって、漁業被害を最小限に留めるとともに、水産用医薬品の残留検査を行うことによって、水産物の安全・安心を確保するように努めております。魚の病気は漁業者の判断では原因を特定することが難しいので、担当者には数多くの相談があり、このうち年間約150件の魚病検査が内水面漁業センターと当センターで行われています。近年、このような疾病を診断する方法としてDNA分析を用いることが多くなっており、高度な技術の利用が不可欠となっています。

兵庫県における魚病対策は、昭和34年から始まり、昭和40年代のハマチ養殖の隆盛に伴って、魚病関連試験指導が本格化しました。昭和55年には、水産庁が主導して魚病対策事業が始まり、魚病検査機器の導入によって全国規模で検査体制が整備されました。さらに、平成11年に制定された「持続的養殖生産確保法」によって、外国から侵入する疾病の蔓延を防止する体制が整備され、強力な防疫体制となっています。この体制では、国が統括して都道府県間の調整・指導を行うとともに、国際的な防疫調整を行い、(独)水産総合研究センター増養殖研究所では、疾病の検査技術開発等の研究や高度な魚病診断が実施されています。

また、世界的な防疫機関としてOIE(国際獣疫事務局)があり、生物に甚大な被害を及ぼす恐れのある疾病がリスト化されています。これらの疾病は一部の国・地域で蔓延しており、未発生地域に侵入して甚大な被害を及ぼす恐れがあるために、加盟国はこれらの疾病が侵入・蔓延しないように監視しています。さらに、日本に甚大な被害をもたらす可能性のある疾病については、「持続的養殖生産確保法」で「特定疾病」として定められており、国の消費・安全局や、動物検疫所、増養殖研究所が連携して魚類防疫にあたっています。また、都道府県においても現地調査や国と連携して検査を行い、特定疾病の蔓延防止措置を講じています。
 平成15年から全国的に大発生しているコイヘルペスウイルス病もこの特定疾病です。この疾病は人間に感染することはないのですが、コイの大量死亡の危険があるために、兵庫県でも監視を続けています。