農 技第1862号
平成18年12月1日
関係機関長様
兵庫県病害虫防除所長
平成18年度病害虫発生予察特殊報第1号の発表について
表記の病害虫情報を発表します。業務の参考にしてください。
1 病害名 トマト黄化葉巻病
2 病原ウイルス トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV:Tomato yellow leaf curl virus)
3 対象作物 トマト、ミニトマト
4 発生状況
平成18年10月兵庫県南部のハウストマトおよびミニトマトの3ほ場において生長点を中心に黄化葉巻症状を呈する株が認められ、同時にタバココナジラミの発生もあった。そこでLAMP法により検定した結果、トマト黄化葉巻病の疑いが強まったため、農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターおよび香川県病害虫防除所にPCR法による検定を依頼した結果、TYLCVが検出された。
ハウストマトに侵入したと推測される隣接ハウスキュウリに多発していたタバココナジラミのバイオタイプを調査するため、農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターおよび同野菜茶業研究所にPCR法による検定を依頼した結果、バイオタイプBであった。
本病は平成8年に長崎県、愛知県、静岡県で同時に発見され、平成18年10月現在下記の28府県で発生が確認されている。
発表時期 |
発生都道府県 |
平成8年 |
長崎県、静岡県、愛知県(日本で初発生) |
11年 |
佐賀県、熊本県、福岡県、三重県 |
12年 |
群馬県 |
13年 |
岐阜県、宮崎県 |
14年 |
鹿児島県 |
15年 |
大分県 |
16年 |
高知県、和歌山県、広島県、愛媛県 |
17年 |
香川県、岡山県、大阪府、千葉県、徳島県、神奈川県、埼玉県 |
18年 |
京都府、栃木県、山梨県、山口県、茨城県 |
5 病徴
発病初期には新葉が葉縁から退緑しながら葉巻症状となり、後に葉脈間が黄化して縮葉となる。病状が進行すると株全体が萎縮する。発病前に着果した果実は正常に発育するが発病後は開花しても結実しないことが多い。
6 TYLCVの性質
(1) 伝搬
タバココナジラミ バイオタイプQおよびシルバーリーフコナジラミ(タバココナジラミ バイオタイプB)の幼・成虫によって媒介され、一旦ウイルスを吸汁すると約1日でウイルス媒介が可能になり死亡するまで伝搬能力を保持する。本ウイルスは汁液伝搬、種子伝染、土壌伝染、経卵伝染は確認されていない。オンシツコナジラミは本ウイルスを伝搬しない。
(バイオタイプ:種は同じで形態的な区別はできない。遺伝子型など生物学的な性質が一部異なる)
(2) これまでに感染が報告されている植物
感染および発病する植物 |
トマト、ミニトマト、トルコギキョウ |
|
感染のみする植物 |
作物 |
ピーマン、ジャガイモ、インゲン、ペチュニア、ポインセチア ヒャクニチソウ、チョウセンアサガオ |
雑草 |
ハコベ、ウシハコベ、タカサブロウ、ノゲシ、ノボロギク、センナリホウズキ、ホソバツルノゲイトウ、エノキグサ、ベニバナボロギク、ウサギアオイ、イヌホウズキ |
7 防除対策
(1) ほ場内および周辺の管理
ア ほ場内と周辺の雑草防除の徹底
イ トマトの落下や廃棄した果実などからの野良生え株の除去
(2) 苗床および本田の管理
ア 広範囲に発生が認められているので、他産地からの苗の購入については慎重に判断する。
イ 紫外線除去フィルムの使用や0.4mm目程度の防虫ネットを施設の開口部すべてに設置しコナジラミ類の侵入を防止する。
ウ 発病苗、発病株は除去し、ビニールなどで密封し枯死させてから処分する。
エ 定植時の粒剤施用により防除する。
オ ラノーテープや黄色粘着テープなどによる防除を行うとともに黄色粘着トラップを設置し発生を確認したら直ちに薬剤防除を行う。
カ 収穫終了後は施設を2~3週間密閉し、トマトを完全に枯死させ同時にコナジラミ類を死滅させる。