8年度の期首貸借対照表は次のとおりです。 |
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・黒豆を生産し資材費・労賃・経費110円を支払いました。 ・生産した黒豆のうちいくつかを販売し、100円の収入を得ました。 借方 貸方 黒豆:資材費・労賃・経費 110 現金 110 (黒豆生産費) 現金 100 黒豆販売収益 100 |
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・期中取引終了 |
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・支出した資材費(生産費)のうち肥料10円分がそのまま使用されずに残っていました。その分だけ当期の資材費(生産費)は減り、肥料10円は翌期以降の資材費(生産費)として繰り延べられます。 借方 貸方 肥料(期末) 10 黒豆:資材費・労賃・経費 10 (翌期以降資材費) (黒豆生産費) |
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・黒豆生産のための資材費・労賃・経費(生産費)が黒豆(黒豆生産原価)になります。(黒豆10個生産) 借方 貸方 黒豆(生産原価)100 黒豆:資材費・労賃・経費100 (生産10個分) (黒豆生産費) |
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*しかし、この生産原価が即当期の費用(売上原価)になるわけではありません。 |
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・この黒豆(生産原価)のうち販売されずに在庫として残ったものは、黒豆資産(期末棚卸資産)として繰り越され、翌期以降の売上原価を構成します。 借方 貸方 黒豆(期末) 50 黒豆(生産原価) 50 (在庫:5個分) (生産5個分) |
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・残り5個分の黒豆(生産原価)50円は、販売済みのものとして当期の売上原価を構成します。 借方 貸方 黒豆売上原価 50 黒豆(生産原価) 50 (販売:5個分) (生産5個分) |
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実際の簿記ではこんなにうまくいきません。棚卸しによる在庫を適正に見積もって、出荷した分の売上原価を計算により把握するのが一般的です。 ・全ての取引終了 損益計算書・貸借対照表作成 |
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・9年度の期首貸借対照表は次のとおりです。 |
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・汎用コンバイン(取得価額100円)を、国等から補助金収入50円を得て購入しました。 借方 貸方 現金 50 補助金収益 50 汎用コンバイン 100 現金 100 |
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・黒豆を生産し資材費・労賃・経費を40円支払いました。 ・生産した黒豆のうち8個販売し、100円の収入を得ました。 借方 貸方 黒豆:資材費・労賃・経費 40 現金 40 (黒豆生産費) 現金 100 黒豆販売収益 100 (黒豆8個分) |
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・期中取引終了 |
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・汎用コンバインの減価償却費を30円費用計上しました。 借方 貸方 減価償却費 30 汎用コンバイン 30 (経費) |
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*国等補助金を受け購入した固定資産については、税の繰り延べ処理として圧縮記帳処理が一般的に行われています。 しかし、人格なき社団であるところの集落営農組織において、固定資産購入時に受ける国等補助金収入については税務申告時に益金不参入が認められているため圧縮記帳の必要がありません。 したがって、減価償却計算において取得価額をもって計算の基礎価額とすることになります。 |
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・期首にあった肥料10円分は当期に使いました。 借方 貸方 黒豆資材費 10 肥料(期首) 10 *棚卸しで肥料等資材費の在庫はありませんでした。 |
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・黒豆生産のための資材費・労賃・経費が黒豆(生産原価)となります。(4個生産) 借方 貸方 黒豆(生産原価)80 黒豆生産費80 (生産4個分) (減価償却費 30) (資材費・労賃・経費40) (資材費(期首肥料)10) |
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・この生産原価のうち当期販売分が当期費用(売上原価)となり、残った分が在庫として翌期に繰り越されます。 ・配分基準は黒豆の個数です。当期黒豆は4個生産されました。 当期の生産原価が80円ですから1個20円です。 |
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・棚卸しをすると、この黒豆が1個(20円)残っていました。 この黒豆は売れ残ったものですから当期費用(売上原価)にせず期末資産(黒豆20円)として繰り越し、翌期以降の費用とします。 借方 貸方 黒豆(期末) 20 黒豆(生産原価) 20 (在庫1個分) (生産1個分) |
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・ということは、残りの黒豆3個分60円は販売済みのものであり当期の費用(売上原価)に振り替えます。 借方 貸方 黒豆売上原価 60 黒豆(生産原価)60 (販売3個分) (生産3個分) |
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・期末在庫として、当期生産黒豆が1個しか残っていないということは、期首にあった黒豆5個は全て販売されたことがわかります。 したがって、期首黒豆50円は全て費用化(売上原価)されました。 借方 貸方 黒豆売上原価 50 黒豆(期首) 50 (黒豆5個分) |
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・全ての取引終了 → 損益計算書・貸借対照表作成 |
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生産(製造)原価報告書の作成及び損益計算書との関係 この項は無理して読まなくてもいいですよ。
農産物を生産販売する営農組合が、損益計算書の作成に付随して基本的につくらなければならない財務書類に生産(製造)原価報告書があります。
上記事例をもとに、生産(製造)原価報告書を作成してみましょう。また、それと関連して損益計算書も作成してみましょう。
これが本来の計算書類のかたちですが、見ただけでやはり気分が悪くなりそうです。
現実的には、収穫した生産物はその年度内に販売又は処理が行われる事例が大半であり、期首期末在庫がない状態では生産品生産原価をそのまま売上原価として処理しても問題はありません。以上で営農組合の経理の流れを終わります。
収支計算書では、営農組合の経営成績を正しく表すことが出来ません。
このことは、以下の取引と損益計算書及び収支明細書の動きのなかで理解するのが一番早道と考えられます。
損益計算の流れ | 営農組合が行っている 収支計算の流れ |
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・運転資金100円を借り入れました。 貸方 借方 現金 100 借入金 100 |
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・借入金を50円返済しました。 貸方 借方 借入金 50 現金 50 |
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・農業機械(取得価額200円)を購入しました 貸方 借方 農業機械 200 現金 200 |
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・農業機械の減価償却費30円を費用計上しました。 貸方 借方 減価償却費 30 農業機械 30 |
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・農業機械(帳簿価額100円)を60円で売却しました。 貸方 借方 現金 60 農業機械 100 機械売却損 40 |
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・黒豆を80円分販売しましたが代金は翌期となります。 貸方 借方 売掛金 80 黒豆販売収益 80 |
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*このように、収支と損益では同じ取引でもまるで違った結果となります。
営農組合では従来より収支計算をもとに決算を行ってきました。しかし、上記の例でわかるようにこれでは営農組合の正確な経営成績を表すことが出来ません。
収支計算はただのお金の出し入れです。
正しい損益計算をもとに、健全な会計事務をいたしましょう。
* 営農組合の会計のほとんどが現金主義会計です。
しかし、現実の会計において費用収益の認識の時期と実際の支出収入の時期とがずれる場合が多々あります。
少々ずれても、その期間内にその取引行為が全て終了すれば問題はないのですが、ときに、そのずれが期間及び年度を越える場合があります。
このときには、このずれを修正し正しい期間損益計算を行うために、借入金貸付金以外に、下記の資産負債勘定を設けて経理をしなければなりません。
・事例をもとに仕訳、損益計算書、収支計算書等取引の流れで理解を深めましょう。
例:1年度の収益となるべき転作奨励金100万円の振り込みが遅れて2年度になってから振り込まれた。
(金額が大きくて、かつ、決済時期が年度を越えた)
正しい流れ | 現金主義による流れ | |||||||||||||
1年度 ・1年度の期首貸借対照表は次のとおりです。 |
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2月までの取引内容 ・収益収入 900万円 費用支出 900万円 貸方 借方 現金 900 収益 900 費用 900 現金 900 |
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3月末に1年度の収入となるべく転作奨励金の額が決定しました。(通知されました。) しかし、当年度中の振り込みはありませんでした。 貸方 借方 未収金 100 収益 100 |
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*これは、1年度の収益となるべき収益100万円を計上し、それに対して現金に変わる資産(未収金)が増えたことがわかります。 この場合、現金主義による経理では何の仕訳もされません。(現金主義による仕訳:なし) |
↑ 未収金計上 |
↑ 未収金計上せず |
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・上記運動貸借対照表から損益計算書を作成すると次のようになりました。 |
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・期末貸借対照表は、次のとおりです。 |
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2年度 |
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・2年度の期首貸借対照表は次のとおりです |
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・1年度の転作奨励金100万円が2年度に支払われました。 貸方 借方 現金 100 未収金 100 |
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*現金主義による仕訳は次のようになりました。 貸方 借方 現金 100 収益 100 |
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・上記取引以外で2年度中の取引内容 収益収入 1,000万円 費用支出 900万円 貸方 借方 現金 1000 収益 1000 費用 900 現金 900 |
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*2年度中に収益収入となるものは全て収入となり、費用支出となるものは全て費用となっています。 |
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・上記運動貸借対照表から損益計算書を作成すると、次のようになりました。 |
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・期末貸借対照表は、次のとおりです |
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営農組合の経理システムが未熟なため、これらの手続き処理等が出来ないときは、(少々邪道ではありますが)事業報告書の中で報告するか、又は、損益計算書の注記事項として開示するなど何らかの方法で関係者に情報開示することが望ましいでしょう。
*このように、毎年同じように努力しても振り込む日が数日違うだけで損益計算書が全く違ったものになってきます。不合理です。
この内容を是正するためには、未収金・未払金勘定を設け正確な経営成績を表す損益計算書を作成しなければなりません。
上記の内容を是正する手続き仕訳は、上記事例の通りです。
参考のために、買掛金・未払金の処理方法を正しい手続きで記載します。
・1年度仕訳(1年度に発生した費用100万円を、1年度には支払いませんでした。
(借方) (貸方)
費用 100万円 買掛金・未払金 100万円
・2年度仕訳(1年度に発生した費用100万円を、2年度に支払いました。)
(借方) (貸方)
買掛金・未払金 100万円 現金 100万円
これらの手続きをすることによって、現金振り込み時期及び決済時期に関係なく正しい損益計算書が作成できます。
評価基準及び評価方法 ①評価基準 取得原価基準 →→→ 取得価額を基準に評価します。 低価基準 →→→→→ 取得価額と期末時価いずれか低い方の価額で評価(届け出が必要)します。 ②評価方法 個別法 →→→→→→ 個々資産ごとにその取得価額(生産価額)が分かるようにしておき、期末棚卸品の価額はその個別取得原価をもって評価する方法です。 先入先出法 →→→→ 最も古く取得されたものから払出しが行われ、期末棚卸品は最も新しく取得されたものからなるものとみなして期末棚卸品の価額を算定する方法です。 後入先出法 →→→→ 最も新しく取得されたものから払出が行われ、期末棚卸品は最も古く取得されたものからなるものとみなして期末棚卸品の価額を算定する方法です。 最終仕入れ原価法 → 決算日に最も近い最終の仕入れ価額をもって、期末棚卸し資産を評価する方法です。 平均原価法等各種 → 取得されたものの平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸品の価額を算定する方法です。 |
*在庫の評価基準及び評価方法については上記の通りですが、実際の在庫評価ではそれほど気にすることはありません。
現実にある営農組合の在庫を事例にして説明しましょう。
営農組合の在庫には金額的に大きなものと小さなものがあります。
① 金額の大きいもの 米、麦、大豆、肥料、農薬、その他
② 金額の小さなもの 種子、油、その他各種資材
金額の小さなものは、購入時に費用としても計算書類に大きな影響は与えません。
金額の大きなもののうち、実際に期末在庫で問題となるのは米と肥料・農薬ぐらいなものです。
そこで、これらの事例をもとに説明します。
・ 米について
原価計算から在庫の評価をするためには少し煩雑な処理をしなければなりません。
その結果在庫評価出来たとしても、その効果はあまり大きくありません。
それよりもその産物、米の時価(農協売渡価額)等から適正な価額を見積もる方、がより現実的な処理と考えられます。
・ 肥料・農薬について
肥料・農薬の個々の単価については農協等でほとんど把握できるものであり、また、組合員もその価額を良く知っていることからその評価については問題はないといえます。
在庫の品質低下又は数量減による費用・損失
品質低下については、目で見て見積もるより外ありません。
数量減にについては、期首在庫及び期中使用数量を把握していない組合では調べようがありません。(調べている組合は出来ます。)
在庫を考慮するかどうかは、在庫の量と価額によります。
たとえば肥料等の在庫が数袋程度で、集落営農組合の経営数値に大きな影響を与えることがないと判断すれば、肥料は購入したときに全て費用化されたものとみなして処理しても問題はないでしょう。
用語説明
取得価額・・・・ 購入価額+付随費用
耐用年数・・・・ 固定資産の使用可能年数(税務上法律で固定資産ごとに決められています。)
残存価額・・・・ 耐用年数経過後の固定資産の評価額(推定値)
償却方法
定額法・・・ 毎年一定額を価値減少分(減価償却費)として費用計上する方法
定率法・・・ 毎年期首帳簿価額に一定率を乗じて価値減少分(減価償却費)として費用計上する方法
固定資産とは
*資産には肥料のように短期間で費用になるものと、農業機械のように長期間で費用になるものとがあります。どちらも同じ費用性資産ですが、長期のものを固定資産といいます。
① 肥料等(棚卸し資産)・・・・・ 短期の費用性資産
② 農業機械等(固定資産)・・・・ 長期の費用性資産
・資産の費用化の流れについては、田植機と肥料を事例にして説明します。
1年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | |
肥料 | 購入時・・・資産 使用時・・・費用 残り・・・・・在庫 |
期首在庫 使用時・・・費用 |
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田植機 | 購入時・・・資産 | ||||
使用価値減少 (減価償却費) |
使用価値減少分 (減価償却費) |
同左 | 同左 | 同左 | |
*田植機(法定耐用年数5年)使用したときに、田植機がボロボロになるかまだ充分使える状態であるかは機械使用者の管理次第ですが、国ではその全使用期間(法定耐用年数)経過後の残存評価額を取得価額の10%と決めています。つまり、全使用期間が終了してもなおかつ取得価額の10%は値打ちが残っていると推定判断しているわけです。
さらに、耐用年数では機械等の種類ごとにその耐用期間(法定耐用年数)及び償却率を決定しています。
このように残存価額及び耐用年数を決めないと、同じ機械を使っても経営者によって減価償却費がバラバラになり、経営数値の比較統一性及び税務の公平性の観点が失われます。
・それでは田植機を事例にして減価償却費を計算しましょう。
条件 田植機の取得価額 100円
法定耐用年数及び償却率 5年 0.20
残存率及び残存価額 10% 10円
償却方法 定額法
定額法による固定資産費用化の考え方
取得価額100円 | 90% | 償却基礎額 90円 (100円 × 90%) |
減価償却費 18円 |
耐用年数 5年 |
減価償却費 18円 |
||||
減価償却費 18円 |
||||
減価償却費 18円 |
||||
減価償却費 18円 |
||||
残存率 10% | 残存価額 10円 (100円 × 10%) |
同左 | ||
*取得価額100円の内10円は残存価額(残存率10%)で、残りの90円は償却基礎額です。
この償却基礎額90円を耐用年数5年で除すると1年の償却費18円が算出されます。
償却基礎額90円 ÷ 耐用年数5年 = 減価償却費18円
以上の流れを最初から計算式で表すと、次のようになります。
取得価額 残存率 耐用年数 減価償却費
↓ ↓ ↓ ↓
100 × (1 - 0.1) × (1 / 5) = 18
↑ ↑
償却基礎額 償却率
実際の計算は、次のようになります。
100 × 0.9 × 0.2 = 18
↑ ↑ ↑
償却基礎額 償却率 減価償却費
田植機の費用化 (田植機の帳簿価額と減価償却費との関係)
1年目決算
取得価額 100円 |
1年目費用18円 | ->減価償却費18円-->損益計算書 |
2年目費用18円 | 固定資産82円 -->貸借対照表 | |
3年目費用18円 | ||
4年目費用18円 | ||
5年目費用18円 | ||
残存価額 10円 |
2年目決算
期首帳簿価額 82円 |
2年目費用18円 | ->減価償却費18円-->損益計算書 |
3年目費用18円 | 固定資産64円 -->貸借対照表 | |
4年目費用18円 | ||
5年目費用18円 | ||
残存価額 10円 |
3~4年目決算(上記事例に準ずる)
5年目決算
期首帳簿価額 28円 |
5年目費用18円 | ->減価償却費18円-->損益計算書 |
残存価額 10円 | 固定資産10円 -->貸借対照表 | |
さらに数年経過し田植機を廃棄しました。
残存価額 10円 | ->田植機廃棄損10円->損益計算書 | |
以上の内容をまとめてみると次のようになります。
田植機100円 --> 減価償却費 90円
田植機廃棄損 10円
計 100円
このように取得した田植機100円は全て費用又は損失になりました。
*以上、減価償却費は定額法で説明してきましたが、定率法ではどうでしょうか。
定率法は、固定資産の期首帳簿価額に一定率(定率法による償却率)を乗じて減価償却費を算出する方法です。
そして、耐用年数終了時には残存価額(取得価額の10%)が残っているようになっている償却方法です。利点は早期に償却できることです。一般企業会社等で多く採用されています。
また、法人等で税務署に届け出をしていない場合、機械等の減価償却方法は定率法となっています。
しかしなによりも定率法は感覚的になじみにくく、組合員によく理解してもらいにくい欠点があります。営農組合自身で会計事務(決算申告まで全て)を行うなら、最初は定額法で始めるのが良いと思います。
したがってこのテキストではこれ以上定率法の説明はしません。定率法の採用または、定額法から定率法への移行手続きについては別途相談してください。
定率法については、事例のみ紹介します。
条件 取得価額 100円
法定耐用年数及び償却率 5年 0.369
残存率及び残存価額 10% 10円
償却方法 定率法
1年度減価償却費 取得価額 償却率 1年目減価償却費
100円 × 0.369 = (36.9)37円
1年度末帳簿価額 取得価額 減価償却費 期末帳簿価額
100円 - 37円 = 63円
2年目減価償却費 期首帳簿価額 償却率 2年目減価償却費
63円 × 0.369 = (23・2)24円
2年目期末帳簿価額 期首帳簿価額 減価償却費 期末帳簿価額
63円 - 24円 = 39円
年度途中で固定資産を購入使用したときの減価償却計算
このことについては、事例で理解するのが一番です。
前記の田植機(取得価額100円・耐用年数5年・残存率10%)を、1年度(1年4月~2年3月)に入って10月に購入使用を始めたときの1年度の田植機の減価償却計算は、次のとおりです。
(1年10月~2年3月)
6月
100 × 0.9 × 0.2 × ―――― = 9
↑ ↑ 12月 ↑
償却基礎額 償却率 (1年4月~2年3月) 減価償却費
その他、年度途中で処分した固定資産の処理(減価償却計算を含む)については、別途相談して下さい。あまり難しくはありません。
固定資産費用化の仕訳には、このテキストの事例のように固定資産から減価償却費を直接控除する方法と、減価償却費の相手勘定として減価償却累計額勘定(固定資産の控除項目)を用いて間接的に控除する方法があります。
・事例で理解しましょう。(田植機100円・耐用年数5年で1年目・残存価額10円・減価償却費18円)
(借方) (貸方)
減価償却費(田植機) 18 減価償却累計額 18
運動貸借対照表 | |
借 方 | 貸 方 |
--- --- 田植機 100 減価償却累計額 △18 82 --- --- |
--- --- --- --- --- --- --- --- |
・この仕訳の結果による貸借対照表による固定資産の表示方法は、次のような情報を開示しているため、最も適切な方法とされています。
開示情報 田植機の取得価額 100円
固定資産の資金回収額 18円
固定資産の残存価額 82円
*このテキストでは理解促進を最重点としたため、最も簡単な方法(固定資産から減価償却費を直接控除する方法)で仕訳をしています。
最初まだ会計に慣れない間は、この方法による仕訳及び表示方法で進めていけばよいと思います。
しかしある程度会計がわかってきたら、より多くの情報を得る意味でも減価償却累計勘定を用いた間接控除方法による仕訳を推奨します。
商法にもとづけば、前年度の総会は新年度になってから3ヶ月以内に開催しなければなりません。
また、税法において確定申告は新年度に入ってから2ヶ月以内に行わなければなりません。
ところで、確定申告は総会で承認された決算にもとづいてされるものとなっています。 つまり、総会が開催されなければ確定申告は基本的に出来ないのです。税務申告期限を考えると、総会の期日は申告期限の期日の前でなければなりません。(やむを得ない事情があるときは申告により申告期限の延長は認められます。)
しかし、その手続き等及びその後の事務手続き等については、少しややこしいところもありますのであまりおすすめできません。集落営農組合程度の会計規模なら決算資料作成にそれほど時間を要しませんので、総会は決算日後2ヶ月以内(出来れば1ヶ月半以内)に開催することをおすすめします。
前述したように、収支計算では営農組合の正しい経営成績を表すことが出来ません。
そういった意味で、一般に作成される収支予算案・収支計画書は営農組合の維持発展のためにあまり役に立ちません。特に固定資産を保有する営農組合にとって、収入と支出が同じ収支計画書は営農組合を維持していくためには極めて危ういものとなってきます。
収入と支出が同じということは、損益計算書において減価償却費の分だけ損失が発生してきます。つまり損失予定計画書と同じ意味になってきます。
収支が収益収入と費用支出のみの状態のとき、固定資産を所有する営農組合の損益計算書の利益が0のとき、収支計算書では固定資産の減価償却費の額だけ収支がプラスとなりその分現金が増加します。
その現金増加分を収益と間違えて配当してしまう事例がいくつか見受けられますが、それをすると、次の固定資産の更新が出来なくなり営農組合の脆弱化につながります。
これは利益もないのに配当をした結果です。
その現金増加分には税金はかかりませんので次の固定資産更新用に定期預金でも預け入れておくことをおすすめします。(もちろん運転資金に使用することもOKです。)
くれぐれも配当しないようにお願いします。また、配当をしたときには個人の雑所得になりますので、個別に申告するよう指導して下さい。
損益計算書の考え方がわかってきたら、収支計画書は止めていく方向で進んでいきましょう。
なにをいまさら!という声が聞こえそうですが、これが案外わからない営農組合が多いのです。配当をいくらしようがしまいが税金の額には全く関係がありません。
その他、その配当を前年の労賃に上乗せして支払う事例がありますが、これもいろいろとむずかしい問題があります。
詳しい内容については、別途相談して下さい
費用にならない配当は、総会の場でしか決定することは出来ません。もちろん勝手に配当することも出来ません。注意いたしましょう。