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現場雑感(2002/7/8)
経営の終わりかた

 経営の終わりかたは、「行けるところまで行く」・・・これが最も正しい。
 年齢がきて後継者がいない経営にとって、損益よりも収支であり、利益よりも収支余剰が大切となってくる。
 機械施設の朽ち果てるまで修理し尽くし、損益がマイナスでも収支がプラスになる方向を目指すべきである。
 先日、某町の養鶏農家数戸を訪れる機会をもった。
 すでに65歳を超えた経営者の方ばかりで、そのほとんどが、一時は農業経営の分野では地域のリーダーとなっていた人達である。そして、その全ては後継者がない。
 さらに、全員に共通しているのは「行けるところまで行く」という経営の考え方である。
 70歳前後になると、ある程度の「あきらめ」の境地と「現役で社会に参加しているよろこび」とかいろんなものが複雑に絡み合い、なんともいえない人間性があらわれてくる。
 また、そのほとんどが地域に根ざした生活を続けた結果、地域の重要な役割を担うことになり、地域にとってなくてはならない存在となっている。
 家族労作経営の良い部分を見させてもらった。
 一息ついたところで、「私たち普及員に、なにかお役立つことができますか?」と投げかけると、なんとも答えにくそうにモゴモゴとしたあと、「とにかく顔を出して欲しい」とのことであった。
 この言葉は、農家からよく聞くことばであるが、大切なキーワードと思っている。
 重点課題に基づく計画活動も大切であるが、「顔出しコミュニケーション活動」も同じぐらい大切な活動ではないか・・・・。
 私自身は「顔出しコミュニケーション活動」とは思っていない。
 「エネルギー補給活動」と思っている。
 経営を止める止めないのきっかけというものは、非常にメンタリティーなものである。
 1ヶ月ほど応援者も無く、孤独で農業経営をやっていれば、たとえ儲かっていても止めたくなるものである。
 そんなとき、「どないや」と顔を出す普及員がいるだけでも「あーっ、気にかけとってくれたんや。もうちょっとだけがんばろか。」と勇気が湧くものである。
 移動エネルギー給油所型普及活動も大切である。
 60歳から80歳までの20年間も農業を維持することが出来れば、これは農業後継者と同じ立派な役割を果たしたことになる。
 1人後継者をつくるのに必要なエネルギーの20分の1のエネルギーで多くの農家が経営を維持できるのである。
 エネルギー補給、やめたらあかん。
 話を元に戻すが、この養鶏農家数戸共同で機械を購入し某特産物を作っているが、年々消費量販売額が落ちているようである
 機械も古くなっている。これも、代表者(養鶏農家)の悩みであるが、新しい機械を更新するには約2000万円新たな出費となるようである。
 『県や町から「補助金50%出すから、新しい機械買わんかいな。」言われとんやけど、わしら自身いつ止めるかわからんし、不安や。』というのである。
 さらに、「今んとこ、古い機械の借金も終わったし、修理しながら行けるとこまで行こ思とんや。」というのである。
 それは、あたりまえの話であり、70歳前後になったらいつでも止める用意しながら経営をするのは立派な態度である。
 それは、決して消極的な生き方ではなく、他人様に迷惑をかけないという「唯我独尊」的生き方である。
 普及員は、常に農家の生き方を尊重しなければならない。