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私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。
今月は企画調整・経営支援部 専門技術員 永井 秀樹が担当します。

The Fly Project

その3 簡易防虫ネット対策

サシバエ対策として畜舎に防虫ネットを設置する取り組みは、愛知県田原市の先進事例の調査から始まりました。「The Fly Project」チームでは、詳細な現地調査をもとに独自の研究を行い、「簡易低コスト防虫ネット」技術を確立しました。

サシバエは、牛の血を吸った後、牛舎周辺の木陰に移動して休息する習性があります。畜舎に設置したネットは、この往来を遮断し、「入りにくく、出にくい」生息環境にすることにより、サシバエの活動を妨害し、生息数を減少させる効果があります。さらに血を吸った直後のサシバエは、動きが緩慢で低い高度(8割以上が1.5㍍以下)でしか飛べません。その習性から、休息場所のある畜舎の側面のみに部分的にネットを設置し、さらに換気のために上部を開放しても効果があることも実証できました。つまり、完全に密閉しなくとも効果が期待できます。

   
   

ネットを設置することにより、「畜舎が暑くならないか?」という疑問がありました。そこで、サシバエネットを設置した農家で温度、湿度(表1と2)を測定しました。なお、比較した「ネット無し牛舎」は、隣接する同じ規模・構造の牛舎です。

結果は、暑熱期(8~10月)の最高気温、平均湿度とも差はありませんでした。ちなみに両牛舎とも、48頭牛床のつなぎ牛舎ですが、20台の送風ファン(1㍍径)による暑熱対策を実施しています。充分な送風・換気対策を講じれば、ネット設置による畜舎環境への影響は回避できることが実証されました。

また、ネットに付着した埃は、ネットの目を詰まらせてしまいます。畜舎は埃(飼料・敷料の粉塵)が大変多く、竹ボウキで叩き落とす等の定期的な掃除は必要です。また垂直に張ったものより、斜めに張ったネットの方が付着は少ない傾向があります。
 サシバエ対策としてのネットの効果は非常に高く、設置農家でのサシバエの被害は確実に減少しています。(表3参照)

   

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