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 現場雑感(2002/7/8)
 経営指導って何?

 経営指導に関する概念は、あまり学んだ記憶がありませんが、私自身はこう思っています。
 経営指導というものは、対象との接点から生ずるものであり、対象が何らかの経営アクションを起こす要因となるものを共に発見する過程と考えています。
 したがって、そこにはあるべき経営指導の姿もなければ求める経営のかたちもありません。
 そのとき、その状況の中でその農家にとって最もよい方向を模索することが最も大切なのです。
 また、経営指導というのは全人格的なものであり、生活を含めた幅広いものです。
 そういった意味では、当然技術指導も経営指導に入るし地域活性化指導、各種グループ指導もその範疇に入ります。
 ただ、普及員としては、現場に出向くに当たって出来るだけ多くの武器をもつにこしたことはないのですが、それが技術指導だけではちょっと心もとない気がします。
 さて、今後の経営技術として、是非とも身に付けたい技術として法律に関する技術があります。
 税法、社会保障制度に関する法律、労働三法、民法等々・・・・。
 上記法律の中で農業に関係するものは、上記法律の中で少しの分野を占めているに過ぎず、農業者向けにある程度体系化しても良いんじゃないかと思っています。

経営指導の中での、簿記指導の位置付け
(簿記記録は、経営判断日記帳である)

 さて、普及関係者の中に「簿記指導は経営指導ではない」と思っている人がいますが、これは大変な間違いです。
 簿記とは、正しくは経営判断日記帳のことを指します。
 栽培技術の裏付け資料が、作業日誌なら、経営技術の裏付け資料が、簿記という経営判断日記帳になります。
 この経営判断日記帳を取りまとめ、集体型表(財務諸表)を作成する過程が、簿記指導になります。
 そして、なによりもおもしろいのは、この簿記指導の場面では、経営者の人生観・経営観、家族の状況、嫁姑の関係まで全てあきらかになることです。
 その農家に10数回通ってやっとわかることが、半日でそのほとんどが把握出来るのです。
 そして、この経理数値のひとつひとつの意味が理解される過程で、解決しなければならない問題点及び課題が浮きぼりにされてきます。
 その簿記指導場面での、経営アドバイスほど効果的で的確なものはありません。
 だからこその、簿記指導です。

 さて、経営者の自立のためには、経理技術の習得を欠かすことは出来ません。基礎的条件といっても過言ではありませんが、残念ながらそれが出来ていないのも事実です。
 経理指導というのは、あたりまえの指導であり普及員誰もが身に付けなければならない技術なのです。
 問題は、このあたりまえの技術があたりまえに身についておらず、農家もどうしてよいやらわからず、普及員に聞いても要領を得ずいつまでたっても進歩のない状態なのです。
 関係者の中には、「農業者を簿記の学校で学ばせるようにしたら」と言うものさえいます。これもまた、大きな間違いです。
 農業簿記は工的商業業簿記の範疇に入り、簿記3級の知識ではどうにもならないものです。
 簿記の学校に行って、商業簿記のみならず工業簿記さらに原価計算の全てを学ばせてどうしようというのでしょうか。それよりも、そのエッセンスだけをしっかりと教え学ばせるほうがより適切であり、農家の経理能力は一気に向上します。
 このエッセンスの経理技術だけなら、そんな難しいものではなく、2,3日も勉強すれば、十分に身に付くものです。
 こういう状況の中ですから、経理指導・簿記指導というものは経営指導の中で極めて重要性が高いといえるので、普及活動の目標のひとつに経理技術の習得・簿記技術の習得を掲げても何ら不思議なことはありません。

 ただ、ここで間違って困るのは経理指導・簿記指導=複式簿記指導と思っているばあいです。
 もしも、そう思っているなら、さらなる大きな間違いであり、考え方を改めなければなりません。
 経理技術習得の目安は、経理システムが概念的に理解できるかどうかにかかっています。
 この概念さえ理解できれば、単式簿記であろうが、日記帳であろうが、領収書+普通預金通帳+メモ+その他だけの超々簡易記帳であろうがまったく問題ありません。
 いつでもどこでも、記録の手がかりさえあれば、100%間違いのない貸借対照表及び損益計算書をつくることは可能です。
 その技術を農家に習得させ、ひとつひとつ現場で確立していく過程が普及の財産となるのです。

経営指導は、土づくり指導
 経営指導は、土づくり指導と同じです。
 今日咲く花も、数年先に咲く花も、良い花を着けるためには、土づくりから始めなければなりません。
 即効性肥料だけで育てても、良い花は咲きません。
 そして、その土づくりは、目立たず、一年たってもその効果は見えないのです。
 それが現れるのは、継続した土づくりが数年経過した、今まさに花が咲かんかというその時です。
 経営指導も、同じと考えています。
 その効果は、その指導した年には見えず、数年先にやっと現れてくるものです。
 したがって、その部分に評価の光を当てることは、ことさら難しいように感じられます。
 対象の心の変化を読みとり、記録することしか方法がありません。
 まさに、教育事業です。
 目に見えた実績を問われる現在、しかし、であるからこそ、失ってはいけない普及の部分がここにあるような気がします。

経営指導は、1対1で
 1対1で、自分の力で、とにかくやってみましょう!
 さて、この頃は簿記資格を持つ普及員が増えてきましたが、なにせ現場に弱すぎます。
 泳ぎ方は学んでも、大海で泳ぐことが出来ないのです。
 波がきたときの泳ぎ方、滝つぼの中での泳ぎ方など実践の中でしか身につかないものがあります。
 簿記の資格がなくたって大丈夫です。誰でも泳げます。
 しかし、そのことを教えなければならない指導者及び大先輩普及員達のほとんどが、実際に泳いだことがないのですから仕方がないのかもしれません。
 
 
 あと雑談(無視してください)
 発想の99%はゴミ

 経営がわからない普及員の逃げ道のひとつに「発想」があります。
 普通でも、発想の99%はゴミです。まして、経営能力のない者の発想など100%、10割ゴミです。イチローの打率など目じゃありません。
 その発想から生まれた地域農業、地域活性化、イベントほど怖ろしいものはありません。
 発想というものは、日々の地道な努力から自然に発生するもので、思いつきで生まれるものではありません。
 普及組織も、もっと地道に努力する道を視野に入れてもいいのではないでしょうか。