地域活性化と推進者需要
地域活性化を成功させるためには、その推進機関及び関係機関団体(以下推進者と呼ぶ)による推進者需要は、欠かすことが出来ません。
地域活性化の目的は、地域住民からの盛り上がりによる地域経済文化の活性化及び地域の自立にあります。
そのために、それを推進する者は、その起爆剤としてイベントを企画したり拠点施設を造ったりします。
これらの事業を成功に導くためには、この事業の推進者は、仕事の範囲を超えて推進を図っていきます。
この事業の関係者全員、家族親戚を問わず友人、友人の友人、地域団体等知り合いという知り合いに声を掛け、この事業の参加を呼びかけます。
さらに、これに飽きたらず、各市町の関係団体生産団体の年1回の視察旅行、子供会自治会の視察旅行等、すべてこの事業に照準を合わせるべく働きかけます。
数団体に属している人の中には、年にその団体数だけ、この事業に参加したという事例も結構ありました。
さらに、観光会社等にも働きかけ、全国的にも観光ルートに取り上げられるように提案をします。
観光会社も、目新しいものを欲しがっていますので、すぐに乗ってきます。
拠点施設の活用については、関係者の家族旅行はそこに行くようにし、さらに、仕事面においては、会議という会議をその拠点施設で行うよう、配慮に配慮を重ねていきます。
これらの推進者需要たるや、観光会社のそれを凌ぐほどの力をもっています。
それもこれも地域活性化のためであり、地域が真に自立するまでの呼水的な気持ちで、一生懸命頑張っているのです。
それやこれやの努力の結果、地域活性化事業を立ち上げた初年度は、何とか参加人数、利用人数とも、目標を大幅にクリアーすることが可能となり、関係者一同安堵の胸をなでおろします。
問題は2年目からです。
地域活性化事業の成功の大半は、推進者による推進者需要の効果の結果です。
推進者需要が無くなったら、一気にしぼんでしまうほどの脆弱なものです。
だからこそ、地域住民による自立が求められるわけですが、地域住民の自立は一朝一夕にして出来るものではありませんし、まして1年2年で成就するものでもありません。
推進者需要というバブルは、呼水なんだということを、地域住民に十分知らしめる中で、地域住民の自立を促することが、大切な目に見えない作業として残っています。
ところが、その部分は忘れ去られているようです。
その教育がないと、推進者需要が減る2年目からは、ちょっと辛い状況を目にしなければならなくなります。
全国的にイベント及び拠点施設が、あまりなかった時代には、2年たっても3年たっても、その効果が衰えることもなく、その地域の潤いは消えることはありませんでした。
呼水(推進者需要)1に対して、真水(実際の効果)が数倍以上の時代もありました。
しかし、全国的なイベント及び拠点施設の生産過剰の今日、呼水(推進者需要)1に対して真水1程度の効果しか現れることがなくなりました。
前に、見捨てられた某イベント施設に行く機会をもちましたが、レンガのすきまからはぺんぺん草が生えていました。
そこには、爽やかな風が吹いていて、そのぺんぺん草が揺れる様は、実に風情のあるものでした。
「夏草や、つわものどもが、夢のあと」とありますが、夏草は季節とともに土にかえりますが、施設はブルドーザーで壊さないかぎりなくなりません。
夏の夜のちょっと怖ーい話でした。
これってね、実は特産物育成の世界でも数多くあるんですよね。
特産物が出来かかると、推進者はこぞってそれを宣伝し、さらにいろんなかたちで支援をしていきます。
イベントも積極的に打っていきます。
しかし、次の特産物の目がみえてきたら、前の特産物は忘れ去られていくようです。
その大義は、「もーそろそろ独り立ちしても良いのではないか。」です。
子供を甘やかすだけ甘やかして、新しい子供が出来たら一気に戸外に放り出す。
いつまで、こんなことをやっているのでしょうか。
子供を育てるのに、お金(補助金等各種援助)はいりません。必要なのは、哲学、教育そしてなによりも愛情です。
これからの活性化の方向は、より個別的で、より局所的で、そしてなによりも教育的なものでなければならないような気がしています。