普及現場における経営雑感 3(2002/6/5)
「集落営農組合と労災」
「加工グループと労災」
集落営農組織の機械作業中、ちょっとした怪我はよく起きているようです。
しかし、その場合怪我した本人の健康保険で対処し、その差額を集落営農組織が補っている事例が多いようです。
軽い怪我ならまだいいのですが、これが生命に関わる重大な事故になったらどうするのでしょうか。
常にこうした不安と隣り合わせで、少々の事故は、集落内の地縁関係のなかで「なあなあ」で済ませているのではないでしょうか。
しかし、それが補償問題にまで及んだときには、集落営農組織はいっぺんに吹っ飛んでしまいます。
経営者(役員)責任、補償、傷害の程度によっては年金支払いを集落営農組織で本人が死亡するまで続けていかなければなりません。そんなことは不可能です。
私は、行政側として、集落営農組織を中心にした集落営農を推進するのであれば、労災保険とセットで推進するのが当然と思っています。
現在も、既存の営農組織に対し、機会あるごとに労災システムの導入を進めていますが、実感として理解しがたいのか、今まで何ともなかったのでこれからも大丈夫と思っているのか、なかなか思ったように進みません。
それでも、現在で10集落といったところですか。
前置きが長くなりまして、すみません。
集落営農簿記研修会をしていると、集落営農組織は労災保険に加入できないと思っている役員の方がたいへん多いということがわかってきました。
労災保険の事業主が、1人でも労働者を雇う場合(日数等条件はありますが)つまり雇用被雇用の関係が成立したときに加入が可能となります。
この場合の事業主は、個人、法人、人格なき社団は問いません。(任意の組合は駄目ですよ)
そこで、人格なき社団であるところの集落営農組織についても、事業内容で雇用被雇用の関係が認められれば、労災等労働保険の対象事業となります。
近頃は、ようやくわかってきてくれたのか、前回もはじめて行った営農組合でこのことを説明したところ、即加入ということになりました。
さて、問題は生活改善グループによる加工組織、直売組織のように各組合員間で雇用被雇用の関係が成立していない組織(任意の組合)の場合です。
この場合は、労災保険の対象事業とはなりえず、組織員の作業及び通勤上の傷病については個人の健康保険、民間の保険、自動車保険等各種保険で対処せざるをえません。
これが、人格なき社団としての条件を備え、雇用被雇用の関係が成り立ち、事業が継続的に行われているなら、事業規模に関わらず労災保険の対象事業と認められます。
そこで、それじゃ組合員の誰かを事業主に仕立て上げ、他の組合員を労働者とする態にしようとする考えもきっと出てくると思いますが、いざ事故となったら詳しく調べあげられますので(例えば、労働者に配当したり税務申告上事業主として申告していなかったり)よくよく考えて方針を決めることが大切です。
詳しくは、このホームページの「農業者のための社会保険制度と税金」のページを参照してください。
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