私の試験研究

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。

今回は畜産技術センター 主任研究員 吉田 恵実が担当します。

 

兵庫県にはブランド牛肉の神戸ビーフ・但馬牛(たじまぎゅう)があります。畜産技術センターでは神戸ビーフ・但馬牛が「なぜ美味しいのか?」また、どうすれば「より美味しくできるのか」の研究に取り組んでいます。但馬牛は30から36か月齢位まで肥育された後(写真1)、県内の枝肉市場に出荷され、枝肉(写真2)となって販売されていきます。 

                          

  「美味しい」と一言でいいますが、食べものの美味しさを決める要因はたくさんあります。甘い、旨い、苦い、酸っぱいといった味だけではなく、温度や見た目、お店の雰囲気や誰と一緒に食べるかなど、様々なことが美味しさに影響するといわれていますので、「美味しさとは何か?」というのはとても難しいテーマです。しかし、今までの様々な研究から牛肉の美味しさには、柔らかさなどの「触感」、旨味などの「味」、食べたときの「香り」が大きく影響していることが分かってきています。現在、センターではこれらの項目について研究を進めています。

 以前、本コーナーの「美味しい牛肉を作りたい!」で「香り」に関係している脂肪の質(脂肪酸組成)の研究を紹介しました。今回は「味」に関係するアミノ酸の研究について紹介したいと思います。アミノ酸は蛋白質を構成している要素で、種類によって、甘い、旨い、苦いなど様々な味を呈します。写真3のアミノ酸分析装置を用いて牛肉に含まれるアミノ酸の種類を調べました。そして、味覚の性質別にアミノ酸を表1のように甘味、旨味、苦味の3つのグループに分類して、さらに、各々のグループで遺伝的な影響がどれくらいあるかを調査しました。

 その結果、遺伝率(どの程度遺伝によって決められているかを示す尺度で、1に近いほど遺伝の影響が大きい)は、甘味が0.568、苦味は0.490と遺伝の影響を比較的大きく受けることが分かりました。それに対して、旨味は0.100と低い遺伝率でした。つまり、甘味と苦味は遺伝子によってある程度左右されていますが、旨味は影響をあまり受けていないということです。しかし、アミノ酸は量や種類、組み合わせによっても、味が変わると言われていますので、どのアミノ酸を増やせばいいのか、どのようなバランスが美味しいのかなど、まだまだ、分からないことが多いです。今後も、引き続き、様々な研究を通して、皆様により美味しい神戸ビーフ・但馬牛をお届けできるよう、日々取り組んでいきたいと思います。