私の試験研究

 

当センターの各部署が順に担当して、特徴的な試験研究等の実施状況を紹介します。今回は農業技術センター病害虫部 研究員 川口藍乃が担当します。

 

 

 みなさんは、レタスビッグベイン病をご存じですか?この病気は、土壌中にいる病原ウイルスが、レタスの根から感染し、発病すると葉脈付近の緑色の部分が薄くなり、葉脈が太くなったように見えます(写真1)。症状がひどくなるとレタスの生育が抑制され、結球しにくく(写真2)、小玉になり収量に影響が出てしまいます。

 

 

 

 また、この病気は一度発病すると土壌中にウイルスが残存するので、根絶させるのが非常に困難になります。そのため、病気が発生しても被害を最低限に抑えられるよう対策を考える必要があります。それには、土壌中のウイルスを増やさないことが重要です。

 そこで、土壌中のウイルスを増やさない作物を探し、レタスの前作に栽培することで、被害を抑えられるか調べました。今回の試験は、前作としてカラシナなど4種類の緑肥作物を用いて調査しました(写真3)

 

 

 その結果、栽培した植物体の葉や茎をすき込んだ区では、無処理と比べ、被害を軽減させることができました。特に効果がみられた緑肥は、写真4に示した「カラシナ」と「クロタラリア」でした。カラシナはアブラナ科の植物で、辛み成分の元になる「グルコシノレート」を含み、土壌にすき込むと殺菌作用のある「アリルイソチオシアネート」に変化するので、土壌病原菌の低減効果が期待できるといわれています。クロタラリアはマメ科の植物で、根に着生する根粒菌に窒素固定する働きがあるため、土壌にすき込むと地力窒素の維持向上につながります。直根性で深く根が張るため、下層土の透水性や通気性の改善にも効果があります(「緑肥マニュアル 土作りと減肥を目指して,農研機構,2020」から引用)。さらに、センチュウの抑制効果も期待できます。

 

 また、写真5はウイルス濃度を測定しているところですが、土壌中のウイルス濃度において、緑肥をすき込むと少なくなる傾向が見られました。しかし、どのくらいのすき込み量が必要なのか、そのための栽培方法やウイルスを減少させるメカニズムなど、まだ分かっていないことも多くあります。防除技術として確立していくために、今後も調査やデータの解析を行っていきたいと思います。