ただいまシーズン真っ盛りの“松葉がに”!今回は冬の味覚“松葉がに”の“色の変化”を “ちょっと科学の目”で覗いてみます。

 

1.生(なま)のとき茶褐色をしていたカニが茹でると赤くなるのは?

 カニの殻には“アスタキサンチン”という物質が含まれています。これはエビや鮭、ニンジンやトマトの色と同じ“カロチノイド系の色素”ですが、カニが生(なま)の時にはタンパク質とゆるく結びついていて茶褐色をしています(図1左)。ところが、加熱するとタンパク質が熱で変性して“アスタキサンチン”が離れます(図1中央)。タンパク質から離れた“アスタキサンチン”は空気中の酸素によって酸化されて“アスタシン”という物質になります(図1右)。この“アスタシン”の色が赤いのでカニを茹でると赤く見えるのです。
 (余談)マグロや牛肉の赤い色は“ミオグロビン”や“ヘモグロビン”という色素、タコやイカを茹でたときの赤い色は“オンモクローム”という色素で、カニやエビの色素とは別のものです。

 

 

2.生(なま)のカニを放っておくと黒くなるのは?

 カニには“チロシン”という物質が含まれています(図2左)。これは、タケノコの切り口や納豆の表面に見られる白い結晶と同じ“アミノ酸”の1種です。ところが、カニが傷ついたり、死んだりすると、カニに含まれる“チロシナーゼ”という酵素(こうそ)が活発に働きだし、空気中の酸素(さんそ)を使って“チロシン”を“メラニン”という物質に変えてしまいます(図2右)。この“メラニン”の色が黒いのでカニが黒くなってしまうのです。
 (余談)イカやタコの墨の色、髪の毛の色、日焼けで黒くなるのも“メラニン”によるものです。

 

 

3.カニが黒くならないようにするためには?

 酵素(こうそ)(チロシナーゼ)は酸素(さんそ)がないと”メラニン“をつくることができません。また、温度が低いと働きが鈍くなり、冷凍状態ではほとんど働きません。さらに、85℃以上になると働かなくなります。そこで、カニを黒くさせないためには酵素(こうそ)が働かないようにして、“チロシン”から黒い“メラニン”ができないようにします。そのためには、①活かしておく、②氷詰めや水氷詰めにする、③ビタミンCなどの食品添加物を活用する、④冷凍する、⑤ボイル加工するなどの方法があります。
 漁師さんや加工屋さんは、カニの状態や使いみちにあわせてこれらの方法をうまく使い分け、新鮮でおいしい“松葉がに”を届けています。

 

(お問い合わせ)但馬水産技術センター TEL:0796-36-0395