夏の風物詩“一夜干しするめ”の天日干し! 今回は“一夜干しするめ”について、加工屋さんの“職人の技”を、技術センターの“ちょっと科学の目”で紹介します。
 スルメイカは1年中獲れますが、夏から秋にかけて特にたくさん獲れるようになります。“一夜干しするめ”によく使われるスルメイカは主に沿岸いか釣り漁業で獲れるイカで、大きさは20~25センチ位のものがよく使われます。生鮮でも流通していますが、イカは魚に比べて冷凍に強いため、お刺身や一夜干しの原料として冷凍保管されることも多いようです。
 いか釣り漁船が獲ってきたスルメイカは、浜で競りにかけられ加工屋さんに運び込まれます。加工屋さんに運び込まれたスルメイカは、包丁で腹(外套部腹面)と頭を割いて内臓、目、口を取り除いた後、スミや内臓のかけらを洗い流します。このとき、海水を使うと汚れが落ちやすく色が良いと言われています。
 洗い終わったスルメイカはそのままか、塩漬けをしてから干します。塩漬けは多くの加工屋さんが“たて塩漬け”と呼ばれる方法で行っています。調理・洗浄したスルメイカを、3~5%位の冷塩水に15~30分ほど漬け込む方法です。以前に紹介したハタハタの場合に比べると塩分濃度が低く、漬ける時間も短くなっています。これは、スルメイカはハタハタに比べて身が薄いことと、塩が効きやすい(吸水しやすい)性質を持っているためです。加工屋さんは、原料の獲れた時期や大きさ、鮮度によって、塩分濃度や漬け込み時間を微調整しています。
 塩漬けが済んだスルメイカは、さっと水洗いして乾燥します。 乾燥は、風通しの良い浜辺で半日ほど天日干しをしたり、冷風乾燥機を用いて20~25℃で3~5時間程度行います。このとき、ヒレと胴体の間に隙間をつくったり、足(腕)同士がくっつかないようちょっと工夫すると干しムラが少なくなって仕上がりが良くなります。 昔はほとんど天日干しでしたが、現在では、天候に左右されず1年を通じて均一な製品を作れる点や衛生面で優れている冷風乾燥が主流になっています。
 干物とはいうものの、一夜干しするめの塩分は1~2%(ヒレと“げそ”はやや多く2~3%)、水分は原料より5~8%少ない70%程度で、昔の干物(上干品)に比べると保存性は低く長期保存するには冷凍しなければなりません。ちなみに上干品の塩分は3~5%、水分は20%程度で常温でも長期間保存できます。
 今は天気も良く、おいしい一夜干しするめができる時期です。自分の好みにあった塩加減、干し加減の一夜干しを作ってみてはどうでしょう?

 

 

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