奨励品種決定調査ってなあに?
皆さんは、兵庫県産のお米や、麦・大豆を使った製品を食べたことはありますか?どんな品種があると思いますか?今回はこれらの品種にスポットを当ててみたいと思います。
1 奨励品種とは
皆さんは、県内の農家の方が栽培している稲・麦・大豆の種子がどのように作られているかご存知ですか。実は、県が深くかかわっているのです。
兵庫県では、条例※で稲・麦・大豆を「主要農作物」と位置付けて、安定生産に向けて、計画的に種子を生産、供給しています。現在、県下で使われている主要農作物の種子の大部分は、県の原種農場等で生産した原種(種子を生産するための元の種子)を使って県内各地の種子生産組合が種子を生産しています。つまり、兵庫県と種子生産組合などが協力して種子を作っているのです。
前置きが長くなりましたが、では、兵庫県では稲・麦・大豆のどのような品種の種子を作っているのでしょうか?下表に示す品種が、県が指定している「奨励品種」であり、栽培のしやすさ、品質、収量性が優れていると認められた品種を奨励品種により選んでいます。稲は11品種、麦は5品種、大豆は2品種となっています。
表 兵庫県の奨励品種一覧(令和4年1月現在)
作物名 | 種 類 | 品 種 名 |
稲 | うるち米(主食用) | コシヒカリ、キヌヒカリ、ヒノヒカリ、きぬむすめ、どんとこい |
うるち米(酒米) | 山田錦、五百万石、兵庫北錦、兵庫夢錦 | |
もち米 | ヤマフクモチ、はりまもち | |
麦 | 小麦 | シロガネコムギ、せときらら、ふくほのか、ゆめちから |
大麦 | シュンライ | |
大豆 | 白大豆 | サチユタカA1号、夢さよう |
(※ 主要農作物種子生産条例:平成30年の主要農作物種子法廃止に伴って制定)
2 奨励品種決定調査とは
奨励品種は、一度指定したらずっとそのまま変わらないというものではありません。
栽培のしやすさ、病害虫への抵抗性、気候の変化、消費者の好みなどの観点から、国や都道府県の研究機関、民間企業等から日々新たな品種が作り出されています。そこで、当センターでは、「奨励品種決定調査」として、これら新しい品種が県下の多様な地勢、気候等の自然条件に適合するかどうか、また、現在の品種と比較して、より良いものかどうか、実際に栽培試験をして調査をしています。
写真1 水稲(場内)。4条ずつ異なる品種を植えるため、田んぼが縞模様に見える。
写真2 水稲(現地)。1つの田んぼに試験用品種と現行品種を並べて植えて比較する。
写真3 大豆(場内)。4条ずつ小区画で比較する。多数のラベルが見える。
写真4 小麦(場内)。四角くパッチワーク状に植えて比較する。
(1) 場内試験と現地試験
稲・麦・大豆ともに、まずは当センター内(場内)で栽培試験を行い、特性を把握します。この場内試験で、栽培のしやすさ、品質、収量性などの点で優れていると判断されたものは、実際に栽培が想定される地域での現地試験に移行します。現地試験では、農家に栽培を依頼し、調査を行うとともに、これまでの品種と比べて評価や感想も伺います。
(2) 収穫物(→生産物)の評価
試験で得られた生産物は、米は当センターで炊飯し、食味官能検査を行います(写真5)。麦や大豆は、実需者(企業等)に加工及び評価をしてもらいます。
写真5 食味官能検査の様子
(3) 奨励品種の指定
これらの過程を経て、総合的に優れていると判断したものは、関係者(国、県、JA、実需者、生産者団体など)による奨励品種審査会において新たな奨励品種として指定されることになります。
今、当センターで育成中の兵庫県主食用オリジナル品種についても、今後、場内の奨励品種決定調査に加わります。最初に書いたように、奨励品種に指定すると基本的に県下の生産量をカバーできるだけの種子を作り、広域で栽培されることになります。
今後もそれぞれの品種の特性をしっかりと把握し、栽培のしやすさ、味を参考に、兵庫県の気候風土にあった優れた品種の選定に努めていきます。